著者
江口 潔
出版者
THE JAPAN SOCIETY OF EDUCATIONAL SOCIOLOGY
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.92, pp.129-149, 2013

本研究では戦前期百貨店の女子店員を取り上げて,技能観の変容過程を検討する。女子店員の職域が拡大したのは,彼女たちの賃金が安いというばかりでなく,彼女たちの対人技能が評価されたからでもあった。彼女たちが売場の過半数を占めるようになると,彼女たちの振る舞いは標準化されていくこととなる。ここでは,三越の女子店員を取り上げて,以下の3点について検討した。<br> 女子店員が採用されるようになった当初,百貨店では,彼女たちが永続的に勤めることを前提としていた。ところが,花嫁修業として働く女子店員が多かったこともあり,短い勤務年数が一般的となった。彼女たちの多くは昇進とは無関係に店員生活を過ごすこととなる。<br> 1900年代初頭には,女子店員は簡単な職務に配属されていた。それというのも,男子店員ほどには専門的な知識を身につけることができないと考えられたからである。その後,百貨店化がすすめられる中で女子店員の丁寧な応対が評価されたことにより女子店員は様々な売場に用いられていくようになる。<br> 1930年代には店舗の拡大を受けて,女子店員が売場の過半数を占めるようになる。この頃から三越では映画や写真を用いた店員訓練を導入して,標準化された対人技能を女子店員たちに学ばせるようになった。そこでは不特定多数の人に開かれた振る舞い方を身につけられると考えられていたのである。

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