著者
黒崎 龍悟 岡村 鉄兵 伊谷 樹一
出版者
日本アフリカ学会
雑誌
アフリカ研究 (ISSN:00654140)
巻号頁・発行日
vol.2014, no.85, pp.13-21, 2014

本稿では,タンザニア南部高地の農村において,近年になって地域住民が独力で進めている小型水力発電に着目し,こうした取り組みがどのように実現しているのかについて紹介する。タンザニア人口の約80%は無電化地域に居住し,そのほとんどが地方である。そのような地域でも電灯やラジオの利用といった基本的ニーズを満たす他,とくに近年では携帯電話の充電など,電力へのニーズは高まっている。本稿が対象とする小型水力発電は出力が数十ワット~数キロワットとごく小規模であるものの,照明やテレビ,養鶏,携帯電話,床屋などへの利用というように電力の用途は多様であり,経済機会の創出や農村の生活の活性化に寄与している。担い手は農民や大工,教員などであり,専門的な技術を学んだ経験があるわけではなく,近隣の教会関係者や,同じ取り組みを進める職人から実践的な技術や知識を得ていた。彼らは農業や職人仕事で得た収入をもとに,廃品や中古部品を最大限活用しながら,時間をかけた試行錯誤のなかで発電に成功している。また,そのために発電システムは持続可能性や再現可能性が担保されている。小型水力発電の特徴は,現代的ニーズを満たしつつもローカルに展開できる技術に根差しているところにある。また,こうした取り組みは住民にとって身近な共有物(コモンズ)である河川を利用するため,必然的に地域社会の理解や環境保全が求められる。アフリカの現代的ニーズに端を発した小型水力発電は,地域の内発的な発展につながる可能性がある。

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