著者
岡村 鉄兵 黒崎 龍悟
出版者
独立行政法人 日本貿易振興機構アジア経済研究所
雑誌
アフリカレポート (ISSN:09115552)
巻号頁・発行日
vol.59, pp.110-121, 2021-09-23 (Released:2021-09-23)
参考文献数
8

太陽光発電による小規模な独立型電源(Solar Home System、以下SHS)は系統電力網が整備されていない地域で、安価に再生可能エネルギーによる電化が可能と期待され、アフリカ農村において2000年頃から急速に普及が進んでいる。しかし、SHSの世帯レベルの電気の利用状況に着目した事例研究は少なく、住民が問題を抱えるに至る要因やそれによって農村住民にもたらされる影響は明らかにされていない。そこで本稿では、タンザニア南西部の農村での現地調査をとおして、SHSの普及状況と不適正利用の実態とその要因を明らかにした。調査はSHSを所有する32世帯とSHS販売者へのヒアリング調査、およびSHSを所有する世帯から10世帯を抽出してデータロガーによる出力測定をおこなった。結果、ほとんどの世帯がシステムの要となるバッテリーの管理に問題を抱えており、そのための経済的損失が示唆された。アフリカの電化状況や関連政策の評価はこのような利用の実態をふまえることが不可欠である。
著者
黒崎 龍悟 Ryugo Kurosaki
出版者
国立民族学博物館
雑誌
国立民族学博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Ethnology (ISSN:0385180X)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.271-313, 2014-11-28

自然植生が大きく後退したアフリカ農村における植林の普及は重要な現代的課題である。アフリカ農村での植林の実態については,人々の植林する動機に焦点を当てた研究が蓄積されてきた。しかし,植林技術が地域社会でどのように受容され継承されてきたかについての詳細な研究はほとんどない。本論文では,植民地期から植林の歴史をもつタンザニア南部の農村を対象にして,植林のような多年にわたる取り組みを必要とする外来技術が,地域社会にどのように根づいていくのかについて考察することを目的とした。同村ではイギリス委任統治時代に植林技術が持ち込まれ,村人は徐々に植林を受容していき,1950年代頃から積極的に植林を始める村人が現れ,2000 年以降には植林に取り組む人数が目に見えて増加していた。本論文では,関連政策や開発プロジェクトなどの動向を考慮しつつ,個々人の植林行動を長期的に追うことで,村人がどのような動機で,またどのような条件の下で植林を試み/繰り返しているのかを明らかにする。そして,植林技術の伝わる複数の経路について着目し,植林技術が地域社会内で広がり,世代を越えて継承されていく様子を動態的に把握する。
著者
黒崎 龍悟 岡村 鉄兵 伊谷 樹一
出版者
日本アフリカ学会
雑誌
アフリカ研究 (ISSN:00654140)
巻号頁・発行日
vol.2014, no.85, pp.13-21, 2014

本稿では,タンザニア南部高地の農村において,近年になって地域住民が独力で進めている小型水力発電に着目し,こうした取り組みがどのように実現しているのかについて紹介する。タンザニア人口の約80%は無電化地域に居住し,そのほとんどが地方である。そのような地域でも電灯やラジオの利用といった基本的ニーズを満たす他,とくに近年では携帯電話の充電など,電力へのニーズは高まっている。本稿が対象とする小型水力発電は出力が数十ワット~数キロワットとごく小規模であるものの,照明やテレビ,養鶏,携帯電話,床屋などへの利用というように電力の用途は多様であり,経済機会の創出や農村の生活の活性化に寄与している。担い手は農民や大工,教員などであり,専門的な技術を学んだ経験があるわけではなく,近隣の教会関係者や,同じ取り組みを進める職人から実践的な技術や知識を得ていた。彼らは農業や職人仕事で得た収入をもとに,廃品や中古部品を最大限活用しながら,時間をかけた試行錯誤のなかで発電に成功している。また,そのために発電システムは持続可能性や再現可能性が担保されている。小型水力発電の特徴は,現代的ニーズを満たしつつもローカルに展開できる技術に根差しているところにある。また,こうした取り組みは住民にとって身近な共有物(コモンズ)である河川を利用するため,必然的に地域社会の理解や環境保全が求められる。アフリカの現代的ニーズに端を発した小型水力発電は,地域の内発的な発展につながる可能性がある。
著者
伊谷 樹一 黒崎 龍悟 近藤 史 加藤 太
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

これは、経済成長にともなって深刻化しているタンザニア半乾燥地域の環境破壊に焦点をあて、人と林が共存しうる社会の形成を目指した実践的な地域研究である。環境破壊を引き起こしてきた内外の要因を探りながら、環境保全と地域経済に関わる活動を計画・実践し、それらの連携をとおして新たな循環型環境利用モデルを構築しようとした。諸活動のモニタリングや住民との議論を重ねるなかで、環境保全に取って不可欠な技術的・社会的要素を解明していった。