- 著者
-
木下 信博
崔 正烈
荒木 滋朗
志堂寺 和則
松木 裕二
日高 滋紀
戸田 佳孝
松永 勝也
小野 直洋
酒向 俊治
塚本 裕二
山崎 伸一
平川 和生
- 出版者
- 公益社団法人 日本理学療法士協会
- 雑誌
- 理学療法学Supplement
- 巻号頁・発行日
- vol.2004, pp.C0761, 2005
【目的】 <BR> 整形外科病院におけるリハビリ診療の中で、中高年齢者において変形性膝関節症(以下膝OAと略す)は頻繁に見られる疾患である。膝関節の主な働きとして、歩行時に支持性と可動性で重要な役割があり、現在、理学療法士の行う関節可動域訓練や四頭筋訓練及び装具療法などが治療として行われており、予防的視点からのアプローチが行なわれているとは言い難い。<BR> 膝OAは老化を基礎とした関節軟骨の変性が原因で、軟骨に対するshear stressは軟骨破壊に大きく作用すると考えられている。<BR> 新潟大学大森教授らによると、より早期に起こると考えられる、3次元的なscrew home 運動の異常が膝関節内側の関節軟骨に対する大きなshear stressになっている可能性が大きいとの報告がある。<BR> そこで我々は膝OA予防の視点から、歩行立脚時のscrew home 運動を正常化出来る靴を、久留米市の(株)アサヒコーポレーションと共同で作成し、九州大学大学院の松永教授らとの共同研究で、膝OAの予防の可能性を検証したので報告する。<BR>【方法】 <BR> 歩行時の踵接地より立脚中期に、大腿部から見た下腿部の外旋であるscrew home 運動を確保する為に、靴の足底部に下腿外旋を強制するトルクヒールを付けた靴を作成し、患者さんに使用してもらった。<BR> 方法として、(1)約7ヶ月間に亘りO脚傾向のある患者さんに日常生活で、はいてもらい靴底の検証。<BR>(2)九州大学大学院システム情報科学研究所製作の位置測定システムで、下肢の荷重時での下腿外旋運動出現の検証。<BR>(3)トレッドミルにおいて、骨の突出部にマークして、高速度撮影での歩行分析。などを実施した。 <BR>【結果及び考察】 <BR> 大森教授らによると、膝OAの進行に伴い、screw home運動の消失もしくは、逆screw home 運動(膝最終伸展時の脛骨内旋)の出現との報告がある。<BR> そこで、(株)アサヒコーポレーションとの共同開発による、トルクヒールを靴底に装着した靴を作成し検証した。<BR>(1)での検証結果は、通常靴の踵は外側が磨り減り、今回の靴では内側が磨り減り、膝が楽になったとの報告があった。<BR>(2)では、歩行時の踵接地より立脚中期に大腿部から見た下腿部の外旋をとらえる事が出来た。<BR>(3)では、歩行時の立脚期に、前方からの撮影でlateral thrust が3度抑制された結果となった。<BR> 膝OAは、高齢化社会の中でも大きな問題となっている、もともと内反膝の傾向にある人にとっての歩行訓練は、かえって有害であることもあり、今回の靴は、歩行時の立脚時において、下腿部に外旋の力を伝えることで膝OAの発症予防に有用であると考えられた。