著者
鶴田 猛 富崎 崇 酒向 俊治 太田 清人 田上 裕記 南谷 さつき 杉浦 弘通 江西 浩一郎
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.E4P3193-E4P3193, 2010

【目的】我々は、日常生活における活動場面において、その活動目的や趣味、嗜好に合わせ履物を選択し使用している。仕事で使う安全靴やスポーツ活動で使用する運動靴、外見の美しさを追求するパンプスなど、履物の種類は多種多様である。様々な活動に必要な姿勢変化や動作が安定して行われるためには、足底と床とが十分に接し、足部にて荷重を適切に受け止める必要がある。歩行による、骨・関節、軟部組織など足部の機能変化は、支持基底面や足部支持性に影響を及ぼし、安定した立位や歩行などの能力改善をもたらすものと考える。これまで、履物と歩行との関連に関する研究は多数報告されているが、足部機能等の評価法の一つである「足底圧」との関連を報告した例は少ない。本研究は、歩行時における履物の違いによる重心の軌跡の変化を捉えることにより、履物が足部機能に与える影響を明らかにすることを目的とする。<BR><BR>【方法】対象は健康な若年成人女性6名(年齢18~32歳)とし、使用した履物は、一般靴及びパンプス、サイズはすべて23.5cmとした。歩行にはトレッドミルを用い、速度4km/h、勾配3%に設定し、裸足、一般靴、パンプスを着用し、1分間の慣らし歩行の後、30秒間(各靴3回測定)の足圧測定を行った。足圧測定には、足圧分布測定システム・F―スキャン(ニッタ株式会社製)を使用し、裸足、スニーカー、パンプス着用時の重心(圧力中心)の移動軌跡長を比較検証した。実験より得られた足圧分布図において、重心点の開始位置(始点・踵部)及び終了位置(終点・踏み付け部)を算出し、(1)始点(2)終点(3)重心の長さの3項目について、それぞれの全足長に対する割合を求め、裸足、一般靴、パンプスにおけるそれぞれの値を対応のあるt検定にて比較検討した。<BR><BR>【説明と同意】被験者には、本研究の趣旨、内容、個人情報保護や潜在するリスクなどを書面にて十分に説明し、同意を得て実験を行った。<BR><BR>【結果】始点において、裸足は一般靴及びパンプスとの比較で有意に値が小さく、パンプスは一般靴よりも有意に大きな値が認められた。終点において、裸足はパンプスとの比較で有意に小さな値が、パンプスは一般靴よりも有意に大きな値が認められた。裸足と一般靴との間に有意差は認められなかった。重心の長さにおいて、裸足は一般靴及びパンプスとの比較で有意に大きな値が認められた。一般靴とパンプスとの間に有意差は認められなかった。<BR> 始点は、裸足、一般靴、パンプスの順で裸足が最後方(踵部)に最も近く、終点は、一般靴、裸足、パンプスの順でパンプスが最後方(踵部)から最も遠く、重心の長さは、パンプス、一般靴、裸足の順でパンプスが最も短かった。<BR><BR>【考察】裸足歩行では、一般靴及びパンプスを着用した歩行に比べて重心の長さが顕著に長く、始点が最も後方に位置していることから、踵部でしっかりと荷重を受けた後、踏み付け部に重心が至るまで、足底全体を使って歩行していることが分かった。また、足圧分布図の重心軌跡を見てみると、重心線の重なりが少なく、履物を着用した歩行の重心軌跡に比べて、足部内外側へのばらつきが大きいことが見られたことから、履物を着用することにより、足関節及び足部関節の運動が制限され、結果的に重心の移動範囲が限定される傾向があることが示唆された。 <BR> パンプスを着用した歩行では、始点・終点ともに最も前方に位置していることから、本来、踵部で受けるべき荷重の一部が前足部に分散し、前足部における荷重ストレスが増強していることが推測される。更に、踵離地における荷重が踏み付け部前方もしくは足趾においてなされている傾向があり、蹴り出しに必要な足趾の運動が制限されるなど、足部が正常に機能していない可能性がある。また、重心の軌跡が最も短いことから、足部の限局した部位を使用した歩行であることが示唆された。このような足部の偏った動きが、将来足部病変をもたらす可能性につながると思われる。<BR><BR><BR>【理学療法学研究としての意義】我々は、ライフスタイルや職業の違いにより、様々な履物を着用して活動しているが、外反母趾や扁平足、足部の痛みや異常を訴えるケースは非常に多い。歩行時における履物の違いが足部に与える影響を理学療法学的に検証することで、より安全で機能的な履物の開発の一翼を担うことができ、国民の健康増進に寄与できるものと考える。
著者
田上 裕記 生駒 直人 和田 浩成 渡邉 英将 大山 三紀 中井 智博 酒向 俊治 井奈波 良一
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.413-419, 2021

<p>【目的】看護師における労働生産性の実態を調査し,心身の健康に関するワーク・エンゲイジメント,ワーカホリズムおよび腰痛との関係性を明らかにすることを目的とした。【方法】病棟看護師女性73 名を対象とし,無記名自記式のアンケート調査を実施した。調査項目は,労働生産性,ワーク・エンゲイジメント,ワーカホリズム,腰痛の有無,期間とした。【結果】労働遂行能力は,ワーク・エンゲイジメント得点の間に有意な正の相関が認められ,ワーカホリズム得点間において有意な相関は認められなかった。ワーク・エンゲイジメントにおいて,腰痛群は,非腰痛群と比較して有意に低値を示し,ワーカホリズムでは両者に有意差は認められなかった。【結論】非特異的腰痛の有無および労働遂行能力は,ワーク・エンゲイジメントを説明する独立因子であり,ポジティブメンタルヘルスの重要性が考えられた。</p>
著者
鶴田 猛 富崎 崇 酒向 俊治 太田 清人 田上 裕記 南谷 さつき 杉浦 弘通 江西 浩一郎
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.37 Suppl. No.2 (第45回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.E4P3193, 2010 (Released:2010-05-25)

【目的】我々は、日常生活における活動場面において、その活動目的や趣味、嗜好に合わせ履物を選択し使用している。仕事で使う安全靴やスポーツ活動で使用する運動靴、外見の美しさを追求するパンプスなど、履物の種類は多種多様である。様々な活動に必要な姿勢変化や動作が安定して行われるためには、足底と床とが十分に接し、足部にて荷重を適切に受け止める必要がある。歩行による、骨・関節、軟部組織など足部の機能変化は、支持基底面や足部支持性に影響を及ぼし、安定した立位や歩行などの能力改善をもたらすものと考える。これまで、履物と歩行との関連に関する研究は多数報告されているが、足部機能等の評価法の一つである「足底圧」との関連を報告した例は少ない。本研究は、歩行時における履物の違いによる重心の軌跡の変化を捉えることにより、履物が足部機能に与える影響を明らかにすることを目的とする。【方法】対象は健康な若年成人女性6名(年齢18~32歳)とし、使用した履物は、一般靴及びパンプス、サイズはすべて23.5cmとした。歩行にはトレッドミルを用い、速度4km/h、勾配3%に設定し、裸足、一般靴、パンプスを着用し、1分間の慣らし歩行の後、30秒間(各靴3回測定)の足圧測定を行った。足圧測定には、足圧分布測定システム・F―スキャン(ニッタ株式会社製)を使用し、裸足、スニーカー、パンプス着用時の重心(圧力中心)の移動軌跡長を比較検証した。実験より得られた足圧分布図において、重心点の開始位置(始点・踵部)及び終了位置(終点・踏み付け部)を算出し、(1)始点(2)終点(3)重心の長さの3項目について、それぞれの全足長に対する割合を求め、裸足、一般靴、パンプスにおけるそれぞれの値を対応のあるt検定にて比較検討した。【説明と同意】被験者には、本研究の趣旨、内容、個人情報保護や潜在するリスクなどを書面にて十分に説明し、同意を得て実験を行った。【結果】始点において、裸足は一般靴及びパンプスとの比較で有意に値が小さく、パンプスは一般靴よりも有意に大きな値が認められた。終点において、裸足はパンプスとの比較で有意に小さな値が、パンプスは一般靴よりも有意に大きな値が認められた。裸足と一般靴との間に有意差は認められなかった。重心の長さにおいて、裸足は一般靴及びパンプスとの比較で有意に大きな値が認められた。一般靴とパンプスとの間に有意差は認められなかった。 始点は、裸足、一般靴、パンプスの順で裸足が最後方(踵部)に最も近く、終点は、一般靴、裸足、パンプスの順でパンプスが最後方(踵部)から最も遠く、重心の長さは、パンプス、一般靴、裸足の順でパンプスが最も短かった。【考察】裸足歩行では、一般靴及びパンプスを着用した歩行に比べて重心の長さが顕著に長く、始点が最も後方に位置していることから、踵部でしっかりと荷重を受けた後、踏み付け部に重心が至るまで、足底全体を使って歩行していることが分かった。また、足圧分布図の重心軌跡を見てみると、重心線の重なりが少なく、履物を着用した歩行の重心軌跡に比べて、足部内外側へのばらつきが大きいことが見られたことから、履物を着用することにより、足関節及び足部関節の運動が制限され、結果的に重心の移動範囲が限定される傾向があることが示唆された。 パンプスを着用した歩行では、始点・終点ともに最も前方に位置していることから、本来、踵部で受けるべき荷重の一部が前足部に分散し、前足部における荷重ストレスが増強していることが推測される。更に、踵離地における荷重が踏み付け部前方もしくは足趾においてなされている傾向があり、蹴り出しに必要な足趾の運動が制限されるなど、足部が正常に機能していない可能性がある。また、重心の軌跡が最も短いことから、足部の限局した部位を使用した歩行であることが示唆された。このような足部の偏った動きが、将来足部病変をもたらす可能性につながると思われる。【理学療法学研究としての意義】我々は、ライフスタイルや職業の違いにより、様々な履物を着用して活動しているが、外反母趾や扁平足、足部の痛みや異常を訴えるケースは非常に多い。歩行時における履物の違いが足部に与える影響を理学療法学的に検証することで、より安全で機能的な履物の開発の一翼を担うことができ、国民の健康増進に寄与できるものと考える。
著者
木下 信博 崔 正烈 荒木 滋朗 志堂寺 和則 松木 裕二 日高 滋紀 戸田 佳孝 松永 勝也 小野 直洋 酒向 俊治 塚本 裕二 山崎 伸一 平川 和生
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2004, pp.C0761, 2005

【目的】 <BR> 整形外科病院におけるリハビリ診療の中で、中高年齢者において変形性膝関節症(以下膝OAと略す)は頻繁に見られる疾患である。膝関節の主な働きとして、歩行時に支持性と可動性で重要な役割があり、現在、理学療法士の行う関節可動域訓練や四頭筋訓練及び装具療法などが治療として行われており、予防的視点からのアプローチが行なわれているとは言い難い。<BR> 膝OAは老化を基礎とした関節軟骨の変性が原因で、軟骨に対するshear stressは軟骨破壊に大きく作用すると考えられている。<BR> 新潟大学大森教授らによると、より早期に起こると考えられる、3次元的なscrew home 運動の異常が膝関節内側の関節軟骨に対する大きなshear stressになっている可能性が大きいとの報告がある。<BR> そこで我々は膝OA予防の視点から、歩行立脚時のscrew home 運動を正常化出来る靴を、久留米市の(株)アサヒコーポレーションと共同で作成し、九州大学大学院の松永教授らとの共同研究で、膝OAの予防の可能性を検証したので報告する。<BR>【方法】 <BR> 歩行時の踵接地より立脚中期に、大腿部から見た下腿部の外旋であるscrew home 運動を確保する為に、靴の足底部に下腿外旋を強制するトルクヒールを付けた靴を作成し、患者さんに使用してもらった。<BR> 方法として、(1)約7ヶ月間に亘りO脚傾向のある患者さんに日常生活で、はいてもらい靴底の検証。<BR>(2)九州大学大学院システム情報科学研究所製作の位置測定システムで、下肢の荷重時での下腿外旋運動出現の検証。<BR>(3)トレッドミルにおいて、骨の突出部にマークして、高速度撮影での歩行分析。などを実施した。 <BR>【結果及び考察】 <BR> 大森教授らによると、膝OAの進行に伴い、screw home運動の消失もしくは、逆screw home 運動(膝最終伸展時の脛骨内旋)の出現との報告がある。<BR> そこで、(株)アサヒコーポレーションとの共同開発による、トルクヒールを靴底に装着した靴を作成し検証した。<BR>(1)での検証結果は、通常靴の踵は外側が磨り減り、今回の靴では内側が磨り減り、膝が楽になったとの報告があった。<BR>(2)では、歩行時の踵接地より立脚中期に大腿部から見た下腿部の外旋をとらえる事が出来た。<BR>(3)では、歩行時の立脚期に、前方からの撮影でlateral thrust が3度抑制された結果となった。<BR> 膝OAは、高齢化社会の中でも大きな問題となっている、もともと内反膝の傾向にある人にとっての歩行訓練は、かえって有害であることもあり、今回の靴は、歩行時の立脚時において、下腿部に外旋の力を伝えることで膝OAの発症予防に有用であると考えられた。