- 著者
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木下 信博
日高 滋紀
塚本 裕二
山崎 伸一
平川 和生
松永 勝也
小野 直洋
志堂寺 和則
- 出版者
- JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
- 雑誌
- 日本理学療法学術大会
- 巻号頁・発行日
- vol.2006, pp.C0873-C0873, 2007
【目的】高齢化の進行に伴って、変形性膝関節症(以下膝OAと略す)は頻繁に見られる疾患であり、病状が進むと機能的障害を残し日常生活に支障をきたすことが多く、今後高齢者の増加に伴い大きな社会問題になってくる可能性が大きい。膝OAについて、新潟大学大森教授らは、正常な膝伸展時に起こる下腿の外旋:screw home 運動(以下SHMと略す)が膝OAのステージが高くなるに従って出現が低値となっており、ステージ4に至っては、逆SHMが出現していると報告している。このSHMの異常が膝関節の関節軟骨に対する大きなshear stressになっている可能性が大きいと思われる。そこで我々は、九州産業大学大学院の松永教授らとの研究で、健常者と膝OAで歩行時のSHM機能の違いを検討した、更に患者の1日の歩行数の変化もここに報告する。<BR>【方法】大腿と下腿の回旋角度を測定するための装置として、トランスミッタより磁界を発生させ、レシーバはポヒマス社製を使用した。実験は3.5km/hの速度でトレッドミルの上を2分間歩行した、最初の1分間は練習歩行期間とし、残り1分間の内45歩分のデータを解析対象とし、レシーバの位置は大腿部では大腿骨外顆で、下腿部では腓骨小頭とした。そこで本研究では、大腿に対する下腿の回旋角度の傾向を測定することとし、SHM靴(大腿に対する下腿の回旋を促す機能付き靴)の有効性を検証した。<BR>【検証靴の概容】SHM機能が付いていない通常の靴と、立脚期にSHMを発生させるため、靴底に外旋方向の回転トルクを発生させるスクリュー状の弾性体が装着されている靴で比較をおこなった。<BR>【対象】対象者は、膝に障害がない健常者2名と当院に受診中の軽度膝OA患者2名とした。1日歩数の対象者は軽度膝OA患者24名で、SHMなし、1mm、4mmの靴で比較した。<BR>【結果】<BR>結果その1:グラフは縦軸に大腿に対する下腿の回旋を示し、横軸は踵接地からの経過時間を表す。更に、黒の実線が通常の靴で、その他の破線がSHM靴である。これによると健常者における大腿・下腿の回旋運動では、踵接地からスムーズな外旋運動がみられた。<BR>結果その2:軽度膝OA患者2名では踵接地より内旋傾向が見られ、その後に外旋運動が確認された。<BR>結果その3:一日歩数の変化を見ると、SHM1mm群では変化がなく、SHMなし群で若干の歩数の増加が見られたが、SHM4mm群では、3ヶ月目、6ヶ月目と経時的に増加が見られた。<BR>【考察】オープン カイネティックでの下腿の回旋運動は周知の事実だが、歩行時のクローズド カイネティックでの検証を試みた、結果より歩行中で下腿部に外旋の力を伝えることで、膝OA患者の立脚相前期での過度な内旋を抑制する結果となった。我々はこのことによってSHM靴が膝OAに対する効果を発揮し、QOLを改善し歩行距離を伸ばしていると考えられ、このことは、引いては膝OA患者さんが歩行を続けることによって、健康増進につながると思われる。