著者
田中 和幸 寺島 茂 岩本 洋 黒石 正子 山内 格
出版者
一般社団法人 日本超音波検査学会
雑誌
超音波検査技術 (ISSN:18814506)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.52-59, 2015

今回我々は,妊娠中期での胎児超音波スクリーニング検査にてまれな先天性奇形の一つとされる単眼症を強く疑う1例を経験したので報告する.症例は22歳女性(妊娠17週5日),妊娠歴は1経妊1経産.超音波検査で体幹は週数相応で異常を認めないが,頭部は小さく,大脳の位置する前頭部頭蓋内部構造は非対称性でやや偏位しmid line echoおよび透明中隔の描出は困難であった.また顔面には二つの眼球が接して存在し,前額部に長鼻構造を認め単眼症が強く疑われた.流産児は,顔面中央一眼裂内に二つの眼球が接した接眼と前額部に長鼻構造を認め,耳介は両側頭部下部に認めた.胎児染色体検査では異常は認められなかった.<br>本症例は顔面所見より単眼症が強く疑われ,小頭症,頭蓋内構造異常も認められた.単眼症の多くは自然流産すると考えられ出生はまれとされる.また出生できても予後は非常に不良とされる.成因については染色体異常も報告されているが詳細は不明とされる.本症例でも明らかな成因はなく,偶発的に発生したものと思われる.<br>生存の可能性がない単眼症を妊娠早期に診断できれば,早期に母体の負担を軽減することも可能となることから,これを十分に考慮した胎児超音波スクリーニング検査が重要と考える.

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