著者
松田 元 吉永 明里 白土 みつえ 山内 格 高橋 康一 中村 幸雄 鈴木 正彦
出版者
杏林医学会
雑誌
杏林医学会雑誌 (ISSN:03685829)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.417-424, 1989-12-30 (Released:2017-02-13)

われわれは子宮脱の手術術式として主として膣式子宮全摘出術と前・後腔壁縫縮術を施行している。今回,子宮脱手術症例52例にアンケート調査を行い,回答を得た43例に対して術後長期予後に関する検討を行い,次の知見を得た。1)37例は,脱垂状態が改善したが,膣壁の膨隆といった極く軽度のものを含めると6例が再発を訴えた。2)排尿異常を訴えた36例中29例は改善し,残り7例は術後も症状の持続を訴えたが,うち5例は経過観察のみで症状は消失した。3)術後新たに3例が尿失禁を訴えた。4)性交障害を訴えた6例中2例は改善し,2例は症状が持続し,2例は無回答であった。5)術後後遺症として新たに2例が性交障害を訴えた。以上から大半の症例は術後予後はほぼ良好と思われるが,尿失禁,脱垂の再発,あるいは性交障害等,術後障害を残す症例も認められ,手術術式に関して若干の改善の余地があるものと思われた。
著者
田中 和幸 寺島 茂 岩本 洋 黒石 正子 山内 格
出版者
一般社団法人 日本超音波検査学会
雑誌
超音波検査技術 (ISSN:18814506)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.52-59, 2015

今回我々は,妊娠中期での胎児超音波スクリーニング検査にてまれな先天性奇形の一つとされる単眼症を強く疑う1例を経験したので報告する.症例は22歳女性(妊娠17週5日),妊娠歴は1経妊1経産.超音波検査で体幹は週数相応で異常を認めないが,頭部は小さく,大脳の位置する前頭部頭蓋内部構造は非対称性でやや偏位しmid line echoおよび透明中隔の描出は困難であった.また顔面には二つの眼球が接して存在し,前額部に長鼻構造を認め単眼症が強く疑われた.流産児は,顔面中央一眼裂内に二つの眼球が接した接眼と前額部に長鼻構造を認め,耳介は両側頭部下部に認めた.胎児染色体検査では異常は認められなかった.<br>本症例は顔面所見より単眼症が強く疑われ,小頭症,頭蓋内構造異常も認められた.単眼症の多くは自然流産すると考えられ出生はまれとされる.また出生できても予後は非常に不良とされる.成因については染色体異常も報告されているが詳細は不明とされる.本症例でも明らかな成因はなく,偶発的に発生したものと思われる.<br>生存の可能性がない単眼症を妊娠早期に診断できれば,早期に母体の負担を軽減することも可能となることから,これを十分に考慮した胎児超音波スクリーニング検査が重要と考える.