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スポーツ経験を社会学する:―実践の固有な論理に内在すること―
著者
渡 正
出版者
日本スポーツ社会学会
雑誌
スポーツ社会学研究
(
ISSN:09192751
)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.53-65, 2014
本稿の目的は、スポーツ社会学が質的研究を行う上で重要だと考えられる論点を提示することにある。それは端的に言ってそのスポーツ実践がもつ固有の論理を描くべきだという点に尽きるだろう。スポーツ実践固有の論理を見つめることによって、スポーツ実践の中に研究対象の「社会的なるもの」を描くことが質的研究のダイナミクスである。だが、これまでのスポーツ社会学は、こうした「スポーツ実践固有の論理」を描くことにどこまで自覚的だったろうか。<br> かつての機能主義的なスポーツ社会学においては、「スポーツを社会に従属するもの」と想定し、全体社会の変化や特徴がスポーツにそのまま反映されるという立場をとった。ここで採用されたスポーツと社会の関係性のありようは、今なお質的研究を行おうとする際に陥りやすいものでもある。そこで、スポーツ実践固有の論理を描いた最近の研究としてフィリピンのローカルボクサーと車椅子バスケットボール実践のエスノグラフィを取り上げた。<br> 前者は、スポーツ実践とそれが存立する社会的機制を問題化し、その交差点にボクサーの日常、つまりスポーツの経験があるとする。後者は、スポーツ実践のさなかに様々な「社会なるもの(the social)」が現出するとする。つまり、スポーツの経験とは、その実践の文脈における相互行為とし て達成されるものと捉える。いずれにせよ、この二つのスポーツ実践の質的研究は、当事者たちの実践が行われるその「固有の論理」に照準し、質的な調査や分析はその把握のために用いられている。 「固有の実践の論理」を描くことを重視する立場は、スポーツをとりまく社会的事実(社会構造や規範)を外挿することでスポーツ実践を説明しないという態度でもある。徹底して相互行為の中で/中からスポーツ実践を捉え、その実践の固有の論理を描くことが、スポーツの経験を社会学することなのだろう。
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[社会学][CAE] 参照していただいている模様。
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