著者
松岡 亮二
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.96, pp.241-262, 2015
被引用文献数
1

近年,国内データを用いた教育分野における社会関係資本研究は増えつつあるが,社会関係資本の可変性を考慮した上で教育不平等との関連を検討した実証研究は未だに行われていない。そこで本稿は,厚生労働省が収集する21世紀出生児縦断調査の個票データを使用し,(1)家庭の社会経済的地位,(2)父母の学校における社会関係資本,(3)子どもの社会関係資本を含む学校適応の関連を実証的に検討した。<BR> 大規模な3時点の縦断データを用いたハイブリッド固定効果モデルによる分析の結果によると,世帯収入(経済資本)と父母学歴(文化資本)が,父母それぞれの学校行事出席・保護者活動参加で指標化された学校社会関係資本を分化していた。これらの学校社会関係資本の多寡は子ども間の学校適応差異を部分的に説明し,資本量の変化は観察されない異質性を統制しても子どもの社会関係資本を含む学校適応の変化と関連していた。世帯収入と親学歴の学校社会関係資本を介した学校適応への影響は強くはないものの,社会関係資本の差異を通した不平等の再生産という傾向は確認された。<BR> 縦断データを用いた本稿の実証結果は,階層的基盤を有する父母の学校活動関与で示される社会関係資本が子どもの学校適応を促していることを示している。一方で,本稿の知見は,父母の学校関与という「つながり」の増加を通して対人関係を含む学校適応を促すことができる可能性も示唆している。

言及状況

外部データベース (DOI)

Twitter (4 users, 4 posts, 3 favorites)

収集済み URL リスト