- 著者
-
松岡 亮二
- 出版者
- 日本教育社会学会
- 雑誌
- 教育社会学研究 (ISSN:03873145)
- 巻号頁・発行日
- vol.98, pp.155-175, 2016-05-31 (Released:2017-06-01)
- 参考文献数
- 56
- 被引用文献数
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親の世帯収入と学歴によって学校外教育活動への参加に差があることは,実証的に示されてきた。しかし,先行研究は一時点における横断データに依拠してきた。よって,成長に伴って大多数の児童が学校外教育を利用するが,そこに社会経済的な格差が存在するのかは明らかにされていない。また,先行研究は観察されない異質性を統制していないので,経済資本と学校外教育機会利用の関連が過大評価されている可能性がある。そこで本稿は,厚生労働省が実施している21世紀出生児縦断調査の個票データを用い,(1)学齢と参加の関連が,世帯収入を含む社会経済的地位によって異なるのか,そして(2)世帯収入の変化が学校外教育参加の変化と関連しているのかを検討することによって,学校外教育投資における経済資本の役割を精査した。 世帯収入を含む3時点の大規模縦断データを,成長曲線を含むハイブリッド固定効果モデルによって分析した結果,資本転換の基底にあるとされる経済資本量が多く,父母の学歴が高いとき,学齢と学校外教育活動種類の増減の関連がより強い傾向にあった。また,係数は小さいものの,世帯収入の変化と習い事の種類数の変化の関連が明らかになった。この傾向は養育費を目的変数としても確認された。これらの知見は,学校外教育機会量の社会経済的格差は子の成長に伴って拡大するが,微弱ながら経済資本の効果が確認されたことから,経済的支援による格差解消の可能性を示唆している。