著者
鹿毛 雅治 藤本 和久 大島 崇
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.583-597, 2016
被引用文献数
8

「当事者型授業研究」とは, 教師集団による協同的な協議を通じて個々の教師の専門性を向上させるために, 当該授業者(教師), 当該学習者(子どもたち), 当該学校の教師集団を当事者として最大限尊重するようにデザインされた授業研究の一形態である。本研究では小学校での実践事例を取り上げ, 当事者型授業研究が教師たちの専門的な学習や成長に及ぼす効果について自己決定理論に基づいて検討した。談話分析, 質問紙法, インタビュー法を組み合わせたマルチメソッドアプローチによる分析の結果, 当事者型授業研究の実践によって, 当該授業の個別具体的な文脈を伴いながら教師や子どもに焦点化された写実的で精緻な情報が交流する協議会が実現するとともに, 教師がそのような協議会を繰り返し体験することを通じて, 授業研究において当事者をより重視すべきだという教師の信念(授業研究観)が形成され, 積極的な協議会参加と授業研究に関する成果に関する自己認識が促進されることなどが示された。本研究の結果は, 当事者型授業研究が教師たちの基本的心理欲求を充足することを通して, 彼らの動機づけや専門的学習, さらにはキャリア発達を促す可能性を示唆している。

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