- 著者
-
鹿毛 雅治
- 出版者
- 一般社団法人 日本教育心理学会
- 雑誌
- 教育心理学年報 (ISSN:04529650)
- 巻号頁・発行日
- vol.57, pp.155-170, 2018-03-30 (Released:2018-09-14)
- 参考文献数
- 91
- 被引用文献数
-
2
本論文では,学習動機づけをテーマとした日本における過去10年間の研究を概観するとともに,今後の研究の方向性について展望する。その際,理論的な枠組みとして,動機づけ規定因として四要因(認知,感情,欲求,環境),動機づけの安定性に関わる区分として三水準(特性レベル,領域レベル,状態レベル)を取り上げて,知見を整理した。学習とそれを支える動機づけの複雑なプロセスについて解明するためには,認知や感情に関わる多様な要因を同時に取り上げるとともに,特に状態レベルの動機づけに着目して実証的,理論的な研究を進めること,介入研究や開発研究など,教育実践の実際の場面で研究を計画,実施すること,質問紙調査に偏ることなく,実験法,観察法などによる研究を積極的に実施したり,複数の研究手法を組み合わせたマルチメソッドアプローチを推進したりすることなどが今後の研究に期待されている。また,知識,技能の習得を主たる目的とした旧来型の教育観を刷新し,学習動機づけに支えられた思考や表現が活性化するような授業を前提とする発想が研究の基盤として求められている。