著者
中澤 弥子 吉岡 由美 高崎 禎子 小木曽 加奈 小川 晶子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.29, 2017

【目的】長野県の家庭料理の特徴を探ることを目的として、おやつについて分析した。本発表では、長野県各地で大切に作り継がれている多様なおやつについて報告する。<br />【方法】平成25~28年にかけて全県的な現地調査を実施した。調査方法は、主に聞き取り法で行い、可能な場合は、食材や料理、加工品の実物を撮影し、試食を行った。<br />【結果】長野県では、農作業など共同で行う仕事の合間や日常、お茶の時間を設けて(「お茶にする」という。「まあ、お茶でも一杯・・・」から始まる)、主に日本茶におやつ(お茶請けと呼ぶことが多い)を多種類準備して、みんなで楽しく共食・休息する習慣が現在も残っている。「からっ茶を出す」(お茶請けを出さない)と恥ずかしいという文化があり、季節の漬物や煮物、煮豆、粉もの、果物のお茶請けがつきものである。お茶は注ぎ足し、注ぎ足し、何杯もお客に召し上がっていただく。<br /> お茶請けとして地域の産物が生かされていた。漬物では、お葉漬には全県に分布する野沢菜漬をはじめ、地域の漬け菜も用いられており、その他、こしょう漬(信濃町)、すんき(木曽地方)など、他ではみられない加工法の漬物がある。以前に比べ作る量は減ったと話す人が多かったが、各種漬物が発達していた。粉ものでは、おやき(焼き餅)をはじめ、うすやき、にらせんべい、はりこしなど、煮豆では、ひたし豆、くらかけ豆、黒豆、紫花豆の煮豆、おなっとうなど、煮物ではかぼちゃのいとこ煮、大根引き、いなごの佃煮など、果物では、あんずのシロップ漬、かりんの砂糖漬、柚餅子、雲龍巻(柿巻)など、様々に工夫された季節を感じるお茶請けが、家族や近隣の人々、人寄せ(集まり)利用され、人々の交流を担っていた。

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