- 著者
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林 隆子
川端 博子
石川 尚子
大久保 みたみ
大関 政康
大竹 美登利
唐沢 恵子
斉藤 浩子
高崎 禎子
武田 紀久子
山形 昭衛
- 出版者
- The Japan Society of Home Economics
- 雑誌
- 日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
- 巻号頁・発行日
- vol.43, no.5, pp.361-369, 1992
高齢者を対象とする日常着についての調査より, 高齢者の衣服の着方について以下のような特徴がみられた.<BR>(1) 男性は, 上半身に肌着シャツ, 外衣シャツ, ジャケットかジャンパーの着用が一般的であるが, 5・6月ごろの気温の変化には, 肌着シャツの重ね着で対応していることがわかった.下半身には, パンツ, ズボン下にズボンを着用している.<BR>(2) 女性は, 上半身に肌着シャツ, ブラウス, セーター類を着用している例が最も多かった.上半身用衣服には前あき型で七分袖のものが多く, 肌着シャツの重ね着は男子と同様であった.また, 下半身には, パンツ, 長パンツやズボン下そしてズボンかスカートを着用している.夏に向けてスカート・ワンピースの着用が増すが, パンツ類の着用は依然として多く, 足腰の冷えと着衣の関連性をうかがわせる結果であった.また, 服種は男性のものにくらべ女性のほうが多い.<BR>(3) 高齢者用衣服の素材には, 下着類に綿, 外衣に化学繊維が多く使用され, 天然繊維を志向する若者と対照的である.素材に関する知識は一般に低かった.<BR>(4) 着衣の種類より推定した衣服の熱抵抗と衣服重量より, 高齢者は, 若者にくらべ厚着の傾向がみられるが, 衣服の着方に個人差が大きい.<BR>以上の結果より, 高齢者のよりよい衣生活をめざして次のような点が望まれる.<BR>服種の多様化 : 高齢者の日常着の種類をみるとき, 男性では, ジャケットやジャンパーの着用が多い.それにくらべて女性はカジュアルなセーター類の着用が多い.男性は, 習慣的に外出用としてこの種の衣服を着用していると考えられるが, 家庭内ばかりでなく近所等に出かけるときにも, 軽量で伸縮性に富む衣服の着用が勧められる.女性については, 若年者にくらべ衣服の種類が少ないが, 夏になるとスカートやワンピースの着用者も増えるなどおしゃれに無関心でないことが推察される.そこで, ファッション性を取り入れた衣服の供給が望まれる.たとえばキュロットスカートなどは活動がしやすい衣服の例として考えられる.<BR>衣服の着方と形・素材の工夫 : 男女とも, 体温調節のため厚着傾向の人が多数を占めていたが, 少ない枚数でも重ね着をすると同効果が得られるような衣服, とくに下着類の充実が求められる.すなわち, 腰, ひざやひじの冷えを防ぐよう局所的に厚手のものにするなど構成と形の工夫, 熱抵抗性の高い布素材の利用, また, 重ね着をしても活動に支障をきたさないような伸縮性素材の使用などが考えられる.一方で着衣の量に個人差が大きいことから, 季節を問わず, 保温性の高いものから低いものまで多種多様な衣服の供給が望まれる.<BR>表示の改善 : 素材についての知識は一般に低いので, 組成や洗濯表示を見やすく, わかりやすい大きさで表示されるよう改善を促す必要がある.