著者
橘 ゆかり 青山 佐喜子 川島 明子 川原﨑 淑子 千賀 靖子 三浦 加代子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.29, 2017

【目的】日本調理科学会特別研究である『次世代に伝え継ぐ日本の家庭料理』において、1960~1970年頃までに定着していた家庭料理について聞き書き調査を行った。本研究では、主に和歌山県の家庭で伝承されてきたおやつと年中行事や季節の農産物との関係について報告する。<br />【方法】平成25年12月~27年3月に、和歌山県の12地域(橋本、那賀、和海、上富田、大塔、田辺、勝浦、太地、熊野川、有田川、由良、日高)で聞き書き調査を行った。調査対象者の平均年齢は72.3±6.3歳で、合計38名の女性の聞き書き調査を行った。また地域でまとめられた資料や文献の調査を行った。<br />【結果】和歌山県の家庭で伝承されてきたハレの日のおやつとしては、菱餅(雛祭り)、柏餅、ちまき(端午の節句)、だんご、おはぎ(お盆や月見)、亥の子餅、くるみ餅(秋祭り)、よもぎ餅(秋祭り、正月)などがある。ケの日のおやつとしては、かきもち、あられやせんべいなどの餅の加工品、ふなやき、しゃなもち、小麦餅(半夏生他)や蒸しパンなどの小麦粉を使ったおやつの他に、はったい粉(あんぼ)、さつまいものおやつ(焼きいも、蒸しいも、干しいもなど)、炒り豆や果物や果物の加工品が食べられていた。和歌山県のおやつの特徴の一つとしては、季節の農産物と深いかかわりがあると考えられる。亥の子餅は、亥の日の行事食として古くから各地で伝承されている。一般的に亥の子餅はもち米だけで作る地域が多いが、和歌山県の亥の子餅の材料は、もち米だけではなく秋に収穫した里芋を使用する。また、端午の節句の行事食である柏餅は、和歌山県では、柏餅を包む葉は柏の葉ではなくサンキライの葉を使う地域が多く見られた。

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