著者
青山 佐喜子 片山 実圭子 清原 実穂 山本 由喜子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成18年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.141, 2006 (Released:2006-09-07)

【目的】食品の抗酸化活性は、食品の品質劣化の防御ばかりでなく、生体の各種疾患の予防・治療に対しても有効性が期待されている。ネギ属野菜類についても、その機能性のひとつに抗酸化性があり、特にニンニクやタマネギについては多くの研究報告がある。一方、ネギ類は多くの種類が食用とされているが、その抗酸化活性についての研究は少ない。そこで本研究では、青ネギ(葉ネギ)、白ネギ(根深ネギ)と、白ネギと同様に根深ネギの一種である赤ネギについて、抗酸化活性と抗酸化成分を測定して比較した。【方法】抗酸化活性の測定には、ラジカル消去能を測定するTEAC法(Trolox equivalent antioxidant capacity)と、還元力を測定するFRAP法(Ferric reducing antioxidant power)を用いた。抗酸化成分はフラボノイド、アスコルビン酸、アントシアニンを測定した。フラボノイドとアスコルビン酸はHPLCにより、アントシアニンは比色法により測定した。【結果】TEAC、FRAPはともに、3種類のネギ類のうち赤ネギが最も高かった。青ネギと白ネギの抗酸化活性を比べると青ネギのほうが高く、青ネギのTEAC、FRAPは白ネギのそれぞれ約4倍、2倍であった。抗酸化成分のうちフラボノイド類は3種類のネギ類いずれもからケルセチンとケンフェロールが認められた。青ネギからはケンフェロールが多く、赤ネギからはケルセチンが多く認められた。総フラボノイド量は青ネギ、白ネギ、赤ネギで約8:1:17の割合で、赤ネギに最も多く、白ネギ中には最も少なかった。また、青ネギにはアスコルビン酸が多く、白ネギの約4倍含まれていた。さらに、赤ネギからはアントシアニンが検出されたが、青ネギ、白ネギからは検出されなかった。
著者
三浦 加代子 橘 ゆかり 青山 佐喜子 川原﨑 淑子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.24, 2012

【<b>目的</b>】平成21・22年度日本調理科学会特別研究として実施された「行事食」の調査結果のうち、平成22年度の本大会では、年末年始の現状を親子間の伝承の観点から、また、平成23年度は年中行事の認知・経験を世代間比較し、行事と行事食の現状と世代間の伝承について報告した。さらに本年度は通過儀礼とその食事の認知・経験を世代間比較し、世代間の伝承の現状を明らかにすることを目的とした。<br>【<b>方法</b>】平成21・22年度日本調理科学会特別研究の全国統一様式の調査用紙を用いた。対象は和歌山県に10年以上在住している大学生・短大生とその親、また和歌山県福祉保健部、教育委員会ならびに関係機関の協力を得、食生活改善推進協議会会員を中心に食育関係団体会員、地域の研修会等に参加した市民とした。若年層(20歳未満・20歳代)182名:Y群、中年層(40・50歳代)240名:M群、高齢者層(60歳以上)266名:O群に分けて分析し、SPSS(Ver.18)で&chi;<sup>2</sup>検定を行った。<br>【<b>結果と考察</b>】三世代とも認知度の高い通過儀礼(90%以上)は誕生日、七五三、成人式であり、特に若年層(Y群)の認知度が低い通過儀礼(50%以下)はお七夜、百日祝いであった。経験では、三世代とも高かったのは誕生日であった。認知・経験ともに誕生日と七五三以外の通過儀礼には世代間の有意な差が認められた。通過儀礼の食事として、三世代とも高い喫食経験があるのは誕生日のケーキで、行事の認知と経験だけでなく、世代を超えて定着していることがうかがえた。一方、赤飯・小豆飯、紅白餅、お頭付き魚、精進料理等の喫食経験は、世代間の伝承がなされていないことがうかがえた。特に成人式や長寿の祝いの紅白餅・紅白饅頭、法事の精進料理は三世代とも喫食経験が低かった。
著者
青山 佐喜子 高田 修代 藤原 耕三
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
調理科学 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.8-14, 1992-02-20
被引用文献数
1

エリストールとしょ糖の混合溶液及びエリストールを各種調理に用いた場合のし好について官能検査を行い次の結果を得た。1.しょ糖溶液7%を基準にその甘味の25%、50%、75%、100%をエストリールで置き換えた場合に25%置き換えた試料とエリストールだけの試料の収れん味と総合評価の項目には、5%の危険率で有意差があったが、その他の項目にはなかった。2.レモンスカッシュのような酸味のある飲料にエリストールを用いた場合は、しょ糖とし好の差はなく、しょ糖濃度約12%と低いため低温でも溶解しやすく、飲料はエリストールの利用に適していると考えられた。3.ゼリーは甘味だけの場合、酸味を加えた場合とも、各項目についてしょ糖との間にし好の差はなかった。4.アイスクリームやシャーベットのようなエリストールを冷凍する場合には硬くなる傾向がみられたが、甘味を50%置換した場合にはその傾向は少なく、冷菓において、甘味の一部にエリストールを用いることは可能であると思われた。5.水ようかんはしょ糖濃度が高く、冷やして食するためにエリストールだけでは利用できなかった。甘味の50%をエリストールで置換した試料(SE)の総合評価は5%の危険率で好まれなかった。6.しるこの甘味の20%、40%をエリストールに置き換えた場合、エリストール40%の試料(SE40%)は、口ざわりが好まれず、しょ糖より後味が乏しく感じられた。しかし、エリストール20%の試料(SE20%)としょ糖には差はなかった。7.一般のそう菜に利用した場合、エリストールの甘味質があっさりしているため、他の調味料の味が後味として残る傾向があると思われた。日常の低甘味度での煮物や酢の物にしょ糖の一部または全部を置き換えてエリストールを用いることが可能であった。
著者
青山 佐喜子 橘 ゆかり 三浦 加代子 川原? 淑子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.23, pp.128, 2011

【<B>目的</B>】平成21・22年度日本調理科学会特別研究として実施された「行事食」の調査結果のうち、昨年度の本大会において年末年始の現状を親子間の伝承の観点から報告した。さらに本年度は年末年始、上巳、彼岸、端午、盂蘭盆、七夕、土用の丑、重陽、月見、冬至、クリスマス、祭りの認知・経験を世代間比較し、行事と行事食の現状と世代間の伝承について明らかにすることを目的とした。<BR>【<B>方法</B>】平成21・22年度日本調理科学会特別研究の全国統一様式の調査用紙を用いた。対象は和歌山県に10年以上在住している大学生・短大生とその親、また和歌山県福祉保健部、教育委員会ならびに関係機関の協力を得、食生活改善推進協議会会員を中心に食育関係団体会員、地域の研修会等に参加した市民とした。若年層(20歳未満・20歳代)182名:Y群、中年層(40・50歳代)240名:M群、高齢者層(60歳以上)266名:O群に分けて分析し、SPSS(Ver.18)でχ<SUP>2</SUP>検定を行った。<BR>【<B>結果と考察</B>】三世代とも認知度の高い行事(90%以上)は正月、節分、上巳、端午、月見、クリスマス、大晦日であった。行事食で三世代とも高い喫食経験であるのは正月の雑煮、黒豆、かまぼこ、節分の巻き寿司、月見団子、冬至のかぼちゃ、クリスマスのケーキ、大晦日の年越しそばであり、行事の認知と経験だけでなく、それぞれの行事食が若年層(Y群)にも伝承されていることがうかがえた。一方、三世代とも認知度の低い行事(50%以下)は重陽と春祭りであり、特に重陽の経験は少なかった。Y群の認知度が低い行事は彼岸・盂蘭盆・冬至・祭りであり、Y群は盂蘭盆の行事食の経験が低く、核家族化が進み、先祖に対する仏事や地域の祭りが伝承されていないことがうかがえた。
著者
川島 明子 川原﨑 淑子 青山 佐喜子 橘 ゆかり 三浦 加代子 千賀 靖子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.31, 2019

<p>【目的】日本調理科学会特別研究である「次世代に伝え継ぐ日本の家庭料理」において,1960年〜1970年頃までに定着していた家庭料理について聞き書き調査を行った。本研究では,この調査結果を基に副菜の地域別の特徴を探ることを目的とした。</p><p>【方法】平成25年12月〜27年3月に,県内の12地域を訪れ,橋本・那賀,和海は紀北,上富田,大塔,田辺(湊浦),那智勝浦,太地,熊野川は紀南,有田川,由良,日高(御坊)は紀中とし聞き書き調査を行った。調査対象者は,合計38名の女性,平均年齢は72.3±6.3歳であった。今回は調査結果から副菜を地域ごとに抽出し検討を行った。</p><p>【結果および考察】副菜の材料は調査全地域で野菜,山菜,海藻類が酢の物,和え物,煮物として調理されていた。また海の幸に恵まれている,和海(除く紀美野),日高(由良・御坊),田辺,那智勝浦・太地の地域ではじゃこ,釜揚げしらす,鯨のオバキイ(尾羽毛の加工品)や太刀魚の酢の物,また野菜や山菜の煮物がみられた。さらに熊野山間部の上富田・大塔では鯨のコロ(皮を揚げ乾燥させたもの)の煮物,じゃこの炒め物に,有田地方ではぎんた(体長8cmで沖合や深所に生息する)を酢の物や炒め物にしていた。汁ものは全域で雑煮が挙げられ,中には上富田・大塔のぼうり(食べない雑煮)や日高の伊勢エビの味噌汁がみられた。他には紀ノ川流域の鰯の団子汁,おつけ(どじょう汁),上富田・大塔のアラメの味噌汁,田辺のヒロメの清汁やしらすの味噌汁があり,地域性もみられた。漬物は,梅干し,金山寺味噌や白菜漬け,沢庵,らっきょが漬けられていた。また紀南地域では高菜の漬物,紀ノ川流域で「漬物のたいたん」が副菜として挙げられていた。</p>
著者
千賀 靖子 青山 佐喜子 川島 明子 川原崎 淑子 橘 ゆかり 三浦 加代子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.30, 2018

【目的】日本調理科学会特別研究である「次世代に伝え継ぐ日本の家庭料理」において,1960年~1970年頃までに定着していた家庭料理について聞き書き調査を行った。本研究では,この調査結果を基に地域別の主菜の特徴について探ることを目的とした。<br>【方法】平成25年12月~27年3月に,県内の12地域(橋本,那賀,和海,上富田,大塔,田辺(湊浦),那智勝浦,太地,熊野川,有田川,由良,日高(御坊))を訪れ,聞き書き調査を行った。調査対象者は,合計38名の女性,平均年齢は72.3±6.3歳であった。今回は,調査結果から「魚・肉・大豆」を使用した主になるおかずを地域ごとに抽出し,検討を行った。<br>【結果】主菜の材料は,調査地域の地勢により異なった。魚のおかずでは,和海(除く紀美野),日高・由良,田辺,那智勝浦・太地などの海寄りの地域で旬の魚をさしみや焼き魚,煮魚,生節,干物などにして食べていた。一方,内陸地域では,塩物や干物,川魚であった。塩物は,県北,中部の地域では塩鯖,南部は塩さんまが多かった。肉類のおかずでは,鶏を食べている地域が多く,すき焼きにして食べていた地域もあった。牛肉の利用は少ないものの確認できたが,豚肉は全地域で調査者から具体的な料理名が出なかった。山間部では,猪や鹿などの野生の獣肉が食べられていた。鯨肉の利用は,ほとんどの地域で確認でき,調理方法も竜田揚げ,カツレツ,テキ,はりはり鍋,煮物,つけ焼き,カレーと多彩であった。さらに太地では,鯨肉のさしみ,また,いでもの(内臓)やコロ,骨はぎ(軟骨),オバキイ(さらし鯨)やイルカの肉なども利用されていた。大豆のおかずでは,内陸地域で郷土料理の豆腐焼きや豆腐の粉料理が確認できた。
著者
三浦 加代子 川島 明子 橘 ゆかり 川原﨑 淑子 青山 佐喜子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.28, 2016

【目的】日本調理科学会平成21・22年度特別研究で和歌山県の行事食の調査から,伝統的な行事食が伝承されていない傾向にあることが明らかになった。しかし,調査では地域による食文化の違いが残り,特にすしの多様性が示唆された。一方,全国的には回転ずしが広まり,今後地域性のあるすしの食文化が消失される危惧がある。このような背景から,和歌山のすしに関する食文化の現状を把握することを目的とした。<br> 【方法】調査は,平成24年11~12月にすしに関するアンケート調査を郵送法により行った。先の全国調査の際に今後も調査協力できると同意が得られた198名を調査対象者とした。回収率は71.7%であった。<br> 【結果】すしは,巻きずし,握りずし,散らしずし,押しずし,なれずし,目はりずし,柿の葉ずしの7種類に分け,行事におけるすしの喫食状況について調べた。行事で巻きずしを食べる習慣があるのは,節分が76.1%と最も多く,正月(36.6%),法事(31.0%),葬儀(25.4%)であった。握りずしを食べる習慣があるのは,法事(28.9%),葬儀,正月,大晦日の順であった。散らしずしでは,上巳(48.6%),法事,葬儀が多かった。押しずしは,祭り,法事,正月があげられた。なれずしは,祭りと正月が,柿の葉ずしでは,祭りがあげられた。一方,普段の食事でのすしの喫食状況を調べると,半数以上が散らしずしをあげ,普段からすしを食べている状況が伺えた。また,地域に特徴的なすしがあると答えたものが約40%であったが,すしの作り方を次の世代によく伝承していると答えたものは約20%にすぎなかった。
著者
川原﨑 淑子 青山 佐喜子 橘 ゆかり 三浦 加代子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.25, 2013

〈目的〉平成21.22年度日本調理科学会特別研究として実施された「行事食」の調査結果を平成22年から24年度までの3年間に渡り報告してきた。今回は前報告の結果から行事食の喫食経験の高かった40歳以上の方のデータを基に地域間の比較を行った。地域比較を行うことで地域を顧み、伝統食、郷土料理の良さを考える一助となればと考えている。〈方法〉平成21.22年度日本調理科学会特別研究として全国統一様式の調査用紙を用いた。対象は和歌山県に10年以上在住している大学生・短大生とその親、また和歌山県福祉保健部、教育委員会関係機関の協力を得て、更には食生活改善推進協議会会員を中心に食育関係団体会員、地域の研究会に参加した市民とした。これらのデータから40歳以上の方504名を対象とし、和歌山を紀南(126名)、紀中(95名)、紀北(283名)の3地区に分けSPSS(Ver.18)でχ2検定を行った。〈結果〉40歳以上の行事の経験90%以上はお正月、節分、大みそか、クリスマス、土用丑の日、お月見、で低いのは春祭り28%、重陽11%であった。行事食の喫食経験が地域別で有意差が認められたのはお正月、節分、上巳、端午、七夕、盂蘭盆、お月見、冬至、クリスマス、大みそか、春祭り、秋祭りであり、お正月の屠蘇の喫食経験は紀中が低かった。雑煮における地域の違いとしては紀北、紀中は白みそ雑煮で丸餅使用、紀南はすまし雑煮で角餅使用であった。おせち料理の料理類にはほとんど差はなったが、魚料理と肉料理に有意差が認められた。その他の行事でも紀北の経験が高く、紀南は祭りでの寿司やご飯、だんごに特徴がみられた。紀中は盂蘭盆のもちやお月見のだんごに有意差が認められた。
著者
橘 ゆかり 青山 佐喜子 川島 明子 川原﨑 淑子 千賀 靖子 三浦 加代子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.29, 2017

【目的】日本調理科学会特別研究である『次世代に伝え継ぐ日本の家庭料理』において、1960~1970年頃までに定着していた家庭料理について聞き書き調査を行った。本研究では、主に和歌山県の家庭で伝承されてきたおやつと年中行事や季節の農産物との関係について報告する。<br />【方法】平成25年12月~27年3月に、和歌山県の12地域(橋本、那賀、和海、上富田、大塔、田辺、勝浦、太地、熊野川、有田川、由良、日高)で聞き書き調査を行った。調査対象者の平均年齢は72.3±6.3歳で、合計38名の女性の聞き書き調査を行った。また地域でまとめられた資料や文献の調査を行った。<br />【結果】和歌山県の家庭で伝承されてきたハレの日のおやつとしては、菱餅(雛祭り)、柏餅、ちまき(端午の節句)、だんご、おはぎ(お盆や月見)、亥の子餅、くるみ餅(秋祭り)、よもぎ餅(秋祭り、正月)などがある。ケの日のおやつとしては、かきもち、あられやせんべいなどの餅の加工品、ふなやき、しゃなもち、小麦餅(半夏生他)や蒸しパンなどの小麦粉を使ったおやつの他に、はったい粉(あんぼ)、さつまいものおやつ(焼きいも、蒸しいも、干しいもなど)、炒り豆や果物や果物の加工品が食べられていた。和歌山県のおやつの特徴の一つとしては、季節の農産物と深いかかわりがあると考えられる。亥の子餅は、亥の日の行事食として古くから各地で伝承されている。一般的に亥の子餅はもち米だけで作る地域が多いが、和歌山県の亥の子餅の材料は、もち米だけではなく秋に収穫した里芋を使用する。また、端午の節句の行事食である柏餅は、和歌山県では、柏餅を包む葉は柏の葉ではなくサンキライの葉を使う地域が多く見られた。
著者
橘 ゆかり 三浦 加代子 石崎 千賀 川原崎 淑子 青山 佐喜子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.22, pp.189, 2010

【<B>目的</B>】伝統的な祝いや祭りの行事では、風土に根ざした食べ物が先人の知恵で作られ、行事食として日本各地で様々な形で伝承されてきた。しかし、生活様式が変化すると共に稲作にかかわる行事そのものが廃れてきた。家庭で行事食を作る機会が減り、伝統的な行事食が親から子へ伝承されない傾向にあると考えられる。今回の調査は日本調理科学会の平成21・22年度の特別研究の一環として、行事食の認知状況や摂食状況などを調査することにより、和歌山県の調理文化の現状を把握し、行事食の伝承の状況を明らかにすることを目的とした。<BR>【<B>方法</B>】平成21・22年度の日本調理科学会特別研究の全国統一様式の調査用紙を用いて調査を行った。近畿に在住する大学・短期大学の学生およびその親に調査への協力を依頼した。和歌山県の調査対象者は調査に同意した学生およびその親の中で、和歌山県に10年以上在住している人を対象とした。今回は調査項目の中で、大みそか、正月および人日(七草)における行事食の現状を分析した。<BR>【<B>結果および考察</B>】学生と親世代の行事食の喫食経験や認知度を比較した。「屠蘇」、「昆布巻き」、「田作り」「煮しめ」「なます」や「七草粥」などの喫食経験が親子世代間で異なる傾向が認められた。親子世代間で喫食経験に差があまり認められなかった行事食は、正月の「雑煮」「黒豆」、大みそかの「年越しそば」などであった。喫食状況においても同様の傾向が認められた。さらに同一家庭内での学生と親の喫食状況を比較した。家庭内で同じ行事食が供食されていると考えられるが、親子間で喫食状況が異なる行事食が認められ、家庭内での行事食の伝承力が低下していることが推測された。
著者
青山 佐喜子 片寄 眞木子 川原崎 淑子 小西 春江 阪上 愛子 澤田 参子 志垣 瞳 富永 しのぶ 正井 千代子 山本 信子 山本 由喜子 米田 泰子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.21-34, 2004-02-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
39

1)76冊の江戸期料理本中のしょうゆの出現数は2808,たまりは314,いり酒は1166であった. うすしょうゆは230,きしょうゆは205であった. うす 2)うすしょうゆの表記は,うす・薄・淡・稀・色うすきがあった. きしょうゆの表記はき・生・若があった. しかし,現在使われているうすくちしょうゆという表記は見られなかった. 3)うすしょうゆ,きしょうゆのしょうゆ合計に対する出現割合の高い料理本の著者の居住地は京都,大坂など関西が多く,関東は少なかった. 4)江戸初期から次第にたまり,いり酒が減少傾向になり,一方,その他しょうゆが多くなり,うすしょうゆ,きしょうゆも出現して,しょうゆの種類が多様化した. 5)著者の居住地,しょうゆの種類と出現時期,使われ方から,関西でのうす色・うす味食文化は江戸中期から形成されたと推察された. 謝辞本研究はヒガシマル醤油株式会社からの委託研究であり,研究助成金をご供与くださいましたヒガシマル醤油株式会社ならびに貴重なご指導とご助言を賜りました同社の牛尾公平氏に厚く感謝申し上げます. また,文献検索と解読の過程で貴重なご指導を賜りました西山短期大学の余田弘実先生に厚く感謝申し上げます.