著者
川島 明子 川原﨑 淑子 青山 佐喜子 橘 ゆかり 三浦 加代子 千賀 靖子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.31, 2019

<p>【目的】日本調理科学会特別研究である「次世代に伝え継ぐ日本の家庭料理」において,1960年〜1970年頃までに定着していた家庭料理について聞き書き調査を行った。本研究では,この調査結果を基に副菜の地域別の特徴を探ることを目的とした。</p><p>【方法】平成25年12月〜27年3月に,県内の12地域を訪れ,橋本・那賀,和海は紀北,上富田,大塔,田辺(湊浦),那智勝浦,太地,熊野川は紀南,有田川,由良,日高(御坊)は紀中とし聞き書き調査を行った。調査対象者は,合計38名の女性,平均年齢は72.3±6.3歳であった。今回は調査結果から副菜を地域ごとに抽出し検討を行った。</p><p>【結果および考察】副菜の材料は調査全地域で野菜,山菜,海藻類が酢の物,和え物,煮物として調理されていた。また海の幸に恵まれている,和海(除く紀美野),日高(由良・御坊),田辺,那智勝浦・太地の地域ではじゃこ,釜揚げしらす,鯨のオバキイ(尾羽毛の加工品)や太刀魚の酢の物,また野菜や山菜の煮物がみられた。さらに熊野山間部の上富田・大塔では鯨のコロ(皮を揚げ乾燥させたもの)の煮物,じゃこの炒め物に,有田地方ではぎんた(体長8cmで沖合や深所に生息する)を酢の物や炒め物にしていた。汁ものは全域で雑煮が挙げられ,中には上富田・大塔のぼうり(食べない雑煮)や日高の伊勢エビの味噌汁がみられた。他には紀ノ川流域の鰯の団子汁,おつけ(どじょう汁),上富田・大塔のアラメの味噌汁,田辺のヒロメの清汁やしらすの味噌汁があり,地域性もみられた。漬物は,梅干し,金山寺味噌や白菜漬け,沢庵,らっきょが漬けられていた。また紀南地域では高菜の漬物,紀ノ川流域で「漬物のたいたん」が副菜として挙げられていた。</p>
著者
千賀 靖子 青山 佐喜子 川島 明子 川原崎 淑子 橘 ゆかり 三浦 加代子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.30, 2018

【目的】日本調理科学会特別研究である「次世代に伝え継ぐ日本の家庭料理」において,1960年~1970年頃までに定着していた家庭料理について聞き書き調査を行った。本研究では,この調査結果を基に地域別の主菜の特徴について探ることを目的とした。<br>【方法】平成25年12月~27年3月に,県内の12地域(橋本,那賀,和海,上富田,大塔,田辺(湊浦),那智勝浦,太地,熊野川,有田川,由良,日高(御坊))を訪れ,聞き書き調査を行った。調査対象者は,合計38名の女性,平均年齢は72.3±6.3歳であった。今回は,調査結果から「魚・肉・大豆」を使用した主になるおかずを地域ごとに抽出し,検討を行った。<br>【結果】主菜の材料は,調査地域の地勢により異なった。魚のおかずでは,和海(除く紀美野),日高・由良,田辺,那智勝浦・太地などの海寄りの地域で旬の魚をさしみや焼き魚,煮魚,生節,干物などにして食べていた。一方,内陸地域では,塩物や干物,川魚であった。塩物は,県北,中部の地域では塩鯖,南部は塩さんまが多かった。肉類のおかずでは,鶏を食べている地域が多く,すき焼きにして食べていた地域もあった。牛肉の利用は少ないものの確認できたが,豚肉は全地域で調査者から具体的な料理名が出なかった。山間部では,猪や鹿などの野生の獣肉が食べられていた。鯨肉の利用は,ほとんどの地域で確認でき,調理方法も竜田揚げ,カツレツ,テキ,はりはり鍋,煮物,つけ焼き,カレーと多彩であった。さらに太地では,鯨肉のさしみ,また,いでもの(内臓)やコロ,骨はぎ(軟骨),オバキイ(さらし鯨)やイルカの肉なども利用されていた。大豆のおかずでは,内陸地域で郷土料理の豆腐焼きや豆腐の粉料理が確認できた。
著者
三浦 加代子 川島 明子 橘 ゆかり 川原﨑 淑子 青山 佐喜子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.28, 2016

【目的】日本調理科学会平成21・22年度特別研究で和歌山県の行事食の調査から,伝統的な行事食が伝承されていない傾向にあることが明らかになった。しかし,調査では地域による食文化の違いが残り,特にすしの多様性が示唆された。一方,全国的には回転ずしが広まり,今後地域性のあるすしの食文化が消失される危惧がある。このような背景から,和歌山のすしに関する食文化の現状を把握することを目的とした。<br> 【方法】調査は,平成24年11~12月にすしに関するアンケート調査を郵送法により行った。先の全国調査の際に今後も調査協力できると同意が得られた198名を調査対象者とした。回収率は71.7%であった。<br> 【結果】すしは,巻きずし,握りずし,散らしずし,押しずし,なれずし,目はりずし,柿の葉ずしの7種類に分け,行事におけるすしの喫食状況について調べた。行事で巻きずしを食べる習慣があるのは,節分が76.1%と最も多く,正月(36.6%),法事(31.0%),葬儀(25.4%)であった。握りずしを食べる習慣があるのは,法事(28.9%),葬儀,正月,大晦日の順であった。散らしずしでは,上巳(48.6%),法事,葬儀が多かった。押しずしは,祭り,法事,正月があげられた。なれずしは,祭りと正月が,柿の葉ずしでは,祭りがあげられた。一方,普段の食事でのすしの喫食状況を調べると,半数以上が散らしずしをあげ,普段からすしを食べている状況が伺えた。また,地域に特徴的なすしがあると答えたものが約40%であったが,すしの作り方を次の世代によく伝承していると答えたものは約20%にすぎなかった。
著者
橘 ゆかり 青山 佐喜子 川島 明子 川原﨑 淑子 千賀 靖子 三浦 加代子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.29, 2017

【目的】日本調理科学会特別研究である『次世代に伝え継ぐ日本の家庭料理』において、1960~1970年頃までに定着していた家庭料理について聞き書き調査を行った。本研究では、主に和歌山県の家庭で伝承されてきたおやつと年中行事や季節の農産物との関係について報告する。<br />【方法】平成25年12月~27年3月に、和歌山県の12地域(橋本、那賀、和海、上富田、大塔、田辺、勝浦、太地、熊野川、有田川、由良、日高)で聞き書き調査を行った。調査対象者の平均年齢は72.3±6.3歳で、合計38名の女性の聞き書き調査を行った。また地域でまとめられた資料や文献の調査を行った。<br />【結果】和歌山県の家庭で伝承されてきたハレの日のおやつとしては、菱餅(雛祭り)、柏餅、ちまき(端午の節句)、だんご、おはぎ(お盆や月見)、亥の子餅、くるみ餅(秋祭り)、よもぎ餅(秋祭り、正月)などがある。ケの日のおやつとしては、かきもち、あられやせんべいなどの餅の加工品、ふなやき、しゃなもち、小麦餅(半夏生他)や蒸しパンなどの小麦粉を使ったおやつの他に、はったい粉(あんぼ)、さつまいものおやつ(焼きいも、蒸しいも、干しいもなど)、炒り豆や果物や果物の加工品が食べられていた。和歌山県のおやつの特徴の一つとしては、季節の農産物と深いかかわりがあると考えられる。亥の子餅は、亥の日の行事食として古くから各地で伝承されている。一般的に亥の子餅はもち米だけで作る地域が多いが、和歌山県の亥の子餅の材料は、もち米だけではなく秋に収穫した里芋を使用する。また、端午の節句の行事食である柏餅は、和歌山県では、柏餅を包む葉は柏の葉ではなくサンキライの葉を使う地域が多く見られた。