- 著者
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池田 幸夫
酒井 啓雄
古川 博
- 出版者
- 一般社団法人 日本科学教育学会
- 雑誌
- 科教研報
- 巻号頁・発行日
- vol.23, no.4, pp.17-18, 2007
潮汐現象は高校地学で学習する身近な自然現象の一つである。高校地学の教科書では、潮汐は次のように説明されている。①潮汐は主に月の引力と地球の公転による遠心力の合力によって起こる、②月に面した側とその反対側で満潮となる。③満月と新月の時に干満差が最大になる(大潮)。④満潮と干潮は一日にほぼ2回起こる。このうち満潮と干潮の時刻については、問題があるのである。満月の日に月が南中するのは真夜中の 0 時である。したがって、①が正しいならば、大潮の日の満潮は真夜中と真昼に起こらなければならない。ところが、実際には朝と夕方に満潮となり説明と矛盾している。この矛盾は、潮汐の波の速度(約 200 ㎞/s)が地表面に対する月の移動速度(約 470 ㎞/s)に比べてはるかに遅く、月の動きについて行けないことが原因である。本研究では、潮汐を単振動モデルで表し、月の引力の変動に対する海水の運動を力学的に考察して、月の運動に対して潮汐波の位相が 180 °のときに周期的に安定した運動になると考えれば、この矛盾を説明できることが明らかになった。