- 著者
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鳥谷部 邦明
高木 幹郎
村田 哲也
濱田 正行
- 出版者
- 一般社団法人 日本農村医学会
- 雑誌
- 日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
- 巻号頁・発行日
- vol.58, pp.59, 2009
〈諸言〉サルモネラ菌は細菌性胃腸炎の主な原因菌である<BR>が,臨床症状が他の細菌性胃腸炎より激しいことが多く,<BR>急性腎不全の合併も稀ではないとされている。今回我々は<BR>急性腎不全を合併したサルモネラ胃腸炎の1例を経験した<BR>ので報告する。<BR>〈症例〉58歳男性。飲食店で昼食にエビ天丼を食べた数時<BR>間後より下痢,嘔吐が出現し,翌日には吃逆も出現した。<BR>1日に20回以上の下痢,嘔吐を繰り返し,ほとんど食事,<BR>水分も摂れない日が続いた。それから4日後に衰弱してい<BR>るのを家人が発見し,近医から当院へ紹介となった。受診<BR>時,バイタルサインに大きな異常は認めないものの,口腔<BR>内・皮膚の乾燥,頸静脈の虚脱,四肢の冷感を認め,脱水<BR>が疑われた。血液検査では血液濃縮,異常な高窒素血症,<BR>代謝性アシドーシス,CPK 高値を認めた。腹部エコーで<BR>は腎萎縮や水腎症は認めず,尿検査では腎前性が疑われた<BR>ため,感染性胃腸炎に伴う腎前性急性腎不全の診断で入院<BR>となった。入院後,初期輸液にて尿量の反応を認めたた<BR>め,輸液を続行し高窒素血症の改善を認めた。また便培養<BR>より非チフス性のサルモネラ菌O―9群が検出され,下痢<BR>が非常に激しかったため,FOM の内服を行った。下痢が<BR>改善した後に経口摂取を開始し,第24病日に輸液を終了し<BR>て第26病日に退院となった。退院後の経過は良好でBUN,<BR>Cr 値は正常値まで回復した。<BR>〈結語〉サルモネラ胃腸炎により腎前性急性腎不全をきた<BR>した原因は主に脱水と考えられ,補液によって腎不全は著<BR>しく改善した。高度の腎不全であっても腎前性の場合は経<BR>過に注意しつつ十分な補液を施行することが重要と考えら<BR>れた。<BR>