著者
澁谷 直美 大浦 栄次
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.352, 2007

〈緒言〉高齢者の骨密度増加に及ぼす因子について3年前の本学会で報告した。つまり、運動習慣を増やした群において、1年後に骨密度が増加しており、食生活においてカルシウム摂取を増した群では、骨密度の低下が少なかった。今回は例数を増やし、また経過観察期間を2年後とし、高齢者の骨密度増加に関わる要因を再検討した。〈対象〉JA高岡、JAいなば、JA氷見市の協力を得て、承諾が得られた転倒予防教室等に参加した60歳以上の男女で、平成13年度から平成18年度の5年間の測定期間のうち、2年後の測定値が得られた者。〈方法〉超音波を用い、骨量を踵骨にて測定(US法、アキレス)。SOS値(皮質骨測定値)とBUA値(海綿骨測定値、以下BUAとする)のうち、今回はBUA値を用い、現病歴・既往歴、身体活動量の変化や食事内容の変化による2年後のBUA変化率を比較検討した。〈結果・考察〉対象者数は、男56名(平均年齢75.1歳)、女236名(平均年齢73.5歳)である。そのうち増加者は男21名37.7%、女89名37.7%であった。2年後の平均BUA変化率は男-1.77%、女-1.46%で男女とも骨密度が減少していたが、男の方がより減少していた。<BR>胃や腸の手術歴がある者は、男性7名、女性9名で、平均BUA変化率は男性-5.77%、女性-3.88%であった。関節リウマチや腰痛・膝痛等の整形外科的疾患の既往のある者は、男性9名、女性46名で、平均BUA変化率は男性-3.96%、女性-2.07%であった。脳出血や脳梗塞の既往のある者は女性4名で平均BUA変化率は、-8.02%であった。胃や腸の手術歴は骨吸収を悪くするため骨密度が低下したと考えられる。また、整形外科的疾患や脳血管疾患は、運動による刺激が少なくなるため骨密度が低下したと考えられる。今までより身体活動を増やしたと答えた者は、女性25名で、平均BUA変化率は+1.33%で増加していた。運動の種類で、布団上での体操や屋内での軽度の身体活動を増やした者等を除き、より活動的な散歩やペタンクなどの屋外での活動を増やした者は12名で、平均BUA変化率は+4.48%であった。高齢者でも運動を増やすこと、特に屋外での運動を増やすことで、骨密度が増加すると考えられた。今までより身体活動量が減った者は、女性では11名で、平均BUA変化率は-2.65%であった。食事に注意した者は女性で22名であった。平均BUA変化率は2.48%で骨密度は増加していた。牛乳やヨーグルトを食べるようにした者の他に、ひじきや小魚を粉にして食べたなど食べ方に工夫をした者がいた。〈まとめ〉2年間に、運動を積極的にとりいれたり、カルシウムをより多くとること等、生活習慣を変えることにより、高齢者においても骨密度が増加すると考えられた。

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