著者
坪野 由美 飯山 志保 浦島 理恵 山田 孝子 小杉 久子 中川 真由美 澁谷 直美 大浦 栄次
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集
巻号頁・発行日
vol.57, pp.240, 2008

〈はじめに〉平成17年の国民健康・栄養調査によると我が国の喫煙率は男性で39.3%で減少傾向、女性は11.3%で横ばいとなっている。しかし依然禁煙を実行しえない喫煙者が多く存在している。今回禁煙のきっかけ作りのために、身近な人の禁煙エピソードを収集し、その特徴をまとめたので報告する。<BR>〈方法・対象〉対象者は平成19年8月から平成20年1月までの6ヶ月間に、厚生連高岡健康管理センターで日帰りドックを受診し、禁煙アンケート調査に同意を得られた禁煙成功者(以下成功者とする)および禁煙失敗者(以下失敗者とする)(男100名・女10名)の110名である。アンケートは独自に作成したもので喫煙歴、禁煙のきっかけ、禁煙成功・失敗理由等の項目についての自記式調査用紙である。ケースによっては追加聞き取りも行った。<BR>(結果及び考察)対象の内訳は禁煙成功者92名、禁煙失敗者18名である。成功者92名中、男性85名女性7名であった。成功者の禁煙のきっかけ、成功理由を人間関係、健康上の理由、仕事、イベント、趣味・生きがい、金銭的理由、環境、その他の8つに分類した。一番多い禁煙のきっかけ、成功理由は表3に示すとおり健康上の理由が50例と多かった。人間関係では子供の誕生、友人と約束、仕事上ではお客様のため等、イベントでは結婚を機に、エイプリルフールに、ハワイ旅行で等があった。趣味・生きがいではサーフィンを続けるためが1例、金銭的理由ではタバコ税に頭がきて等、環境では職場が禁煙になり等があった。<BR>今回の成功者の禁煙成功の鍵は、健康上の理由が最も多いことがわかった。しかし、健康上の理由で禁煙が必要であっても、その気が全くない喫煙者も存在していることから、禁煙成功には各個人の健康に対する考えが大きく左右しているのではないかと考える。また色々な禁煙エピソードを読むことで喫煙者に共感や驚きが生まれ、禁煙の試みにつながると思われる。今までのように煙の害を啓蒙する、禁煙外来をすすめる等の禁煙支援の方法もあるが、今回の成功者には禁煙教室参加でやめたケースは1例にとどまり、禁煙外来で成功したケースもなかった。しかし、主治医のすすめで成功のケースは5例あり、医師のアプローチの重みは強い。今後保健、医療の両現場においての禁煙支援のひとつの手段に禁煙エピソードを取り入れ、喫煙者の禁煙への興味、関心を引き出し禁煙のきっかけ作りに利用していきたいと考える。
著者
中崎 美峰子 西野 治身 大浦 栄次
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.142-145, 2000-07-20 (Released:2011-08-11)
参考文献数
3

有機リン系農薬の代謝物として, 尿中のジメチルリン酸とジメチルチオリン酸の濃度を, 農薬散布作業を行わない人について分析した。その結果, 尿中代謝物は農繁期, 農閑期を問わずほぼ一年中検出され, 散発的な濃度の上昇が観察されたことから, 農薬散布にかかわらない者でも年間を通して有機リン系化合物の暴露を受ける機会があり, それらが体内にとどまっている可能性も考えられた。
著者
大浦 栄次
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.59, pp.9, 2010

富山県農村医学研究会では、農作業と健康のテーマで、農作業従事による健康障害に関する調査研究を行ってきた。<BR> 以下に、農作業事故と農薬の生体影響に関する主な研究課題の概要を紹介する。<BR><BR>1.農作業事故に関する研究<BR>(1)事故調査方法<BR> 昭和45年以来、県内の全ての外科、整形外科、皮膚科、眼科、ICUを標榜する診療科、および接骨院約900カ所に、毎年、前期・後期の2度にわたり、往復葉書で農作業事故の臨床例の「有無」を問い、「有り」と回答のあった医療機関に、詳細調査用紙を送付し、臨床例の収集を行ってきた。さらに、併せて、全共連富山県本部の協力にて、生命共済・傷害共済証書の中から事故事案を抽出し事故情報の収集に努めている。<BR> また、実際の事故事例について、受傷者及び事故死された方の遺族に事故時の様子などを事故現場でのケーススタディについても過去40件あまり実施してきた。<BR><BR>(2)富山県における農機事故の実態と対策について<BR> 最も、農業機械事故が最も多かったのは昭和50年の年間399件であった。その後、国の農業機械の安全鑑定制度が出来、むき出しのベルトやチェーンなどにカバーが掛けられるようになり機械事故は減少し、昨年度は65件であった。<BR> 機種では、草刈機、トラクター、耕耘機、コンバインが多く、これらの事故対策を集中的に行う事により、多くの事故の予防に繋がると考えられる。<BR> ところで、年々受傷者の年齢は上昇しており、昭和45年の男の受傷者の平均年齢は、45.8歳、女が40.4歳であつたが、昨年度は、男63.7歳、女64.7歳と約20~25歳上昇しており、今後の農機事故対策は高齢者を中心に行う事が求められる。<BR> 流布されているマニュアルは、極めて詳細であるが、高齢者が読みこなすには余りにも煩雑であり、今後、ポイントを絞ったマニュアルが必要と考えられる。<BR><BR>(3)農業機械以外の農作業事故<BR> 農機事故と同様の方法で、昭和56年より農機以外の農作業事故調査を実施してきた。<BR> 平成21年度は、171件であり、農業機械事故より多い。そのうち用手具が関わった事故は55件であり、はしご20件、脚立11件であり、用手具関係の56%を占めている。<BR> このはしごや脚立の事故は、転落など中心であり、重大事故や死亡事故が多い。今後、これら用手具の科学的な問題点の把握や改善が必要と考えられる。<BR><BR>2.農薬の生体影響に関する調査研究<BR> 富山県農村医学研究会では、農薬中毒臨床例調査を農業災害と同様に県内の関係する医療機関700カ所を対象に昭和56年から平成14年まで実施してきた。<BR> 同様の方法で、1990年代に中国河南省の2つの県で実施し、中国の農薬中毒が日本の約20倍、中国全土では約100万人の中毒が発生している可能性を指摘してきた。<BR> また、農薬の生体内残留が単に農薬散布のみならず、食品由来の可能性があることを農薬の尿中代謝物の測定で明らかにし、ポストハーベスト農薬の問題についても、今後注視する必要性があることを示しつつある。<BR>
著者
澁谷 直美 大浦 栄次
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.352, 2007

〈緒言〉高齢者の骨密度増加に及ぼす因子について3年前の本学会で報告した。つまり、運動習慣を増やした群において、1年後に骨密度が増加しており、食生活においてカルシウム摂取を増した群では、骨密度の低下が少なかった。今回は例数を増やし、また経過観察期間を2年後とし、高齢者の骨密度増加に関わる要因を再検討した。〈対象〉JA高岡、JAいなば、JA氷見市の協力を得て、承諾が得られた転倒予防教室等に参加した60歳以上の男女で、平成13年度から平成18年度の5年間の測定期間のうち、2年後の測定値が得られた者。〈方法〉超音波を用い、骨量を踵骨にて測定(US法、アキレス)。SOS値(皮質骨測定値)とBUA値(海綿骨測定値、以下BUAとする)のうち、今回はBUA値を用い、現病歴・既往歴、身体活動量の変化や食事内容の変化による2年後のBUA変化率を比較検討した。〈結果・考察〉対象者数は、男56名(平均年齢75.1歳)、女236名(平均年齢73.5歳)である。そのうち増加者は男21名37.7%、女89名37.7%であった。2年後の平均BUA変化率は男-1.77%、女-1.46%で男女とも骨密度が減少していたが、男の方がより減少していた。<BR>胃や腸の手術歴がある者は、男性7名、女性9名で、平均BUA変化率は男性-5.77%、女性-3.88%であった。関節リウマチや腰痛・膝痛等の整形外科的疾患の既往のある者は、男性9名、女性46名で、平均BUA変化率は男性-3.96%、女性-2.07%であった。脳出血や脳梗塞の既往のある者は女性4名で平均BUA変化率は、-8.02%であった。胃や腸の手術歴は骨吸収を悪くするため骨密度が低下したと考えられる。また、整形外科的疾患や脳血管疾患は、運動による刺激が少なくなるため骨密度が低下したと考えられる。今までより身体活動を増やしたと答えた者は、女性25名で、平均BUA変化率は+1.33%で増加していた。運動の種類で、布団上での体操や屋内での軽度の身体活動を増やした者等を除き、より活動的な散歩やペタンクなどの屋外での活動を増やした者は12名で、平均BUA変化率は+4.48%であった。高齢者でも運動を増やすこと、特に屋外での運動を増やすことで、骨密度が増加すると考えられた。今までより身体活動量が減った者は、女性では11名で、平均BUA変化率は-2.65%であった。食事に注意した者は女性で22名であった。平均BUA変化率は2.48%で骨密度は増加していた。牛乳やヨーグルトを食べるようにした者の他に、ひじきや小魚を粉にして食べたなど食べ方に工夫をした者がいた。〈まとめ〉2年間に、運動を積極的にとりいれたり、カルシウムをより多くとること等、生活習慣を変えることにより、高齢者においても骨密度が増加すると考えられた。