著者
時松 一成
出版者
日本医真菌学会
雑誌
日本医真菌学会総会プログラム・抄録集 (ISSN:09164804)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.26, 2007

深在性トリコスポロン症は、<I>Trichosporon asahii</I>によって起こる重篤な日和見感染症であるが確立された診断法や治療法はない。また、<I>T. asahii</I>は夏型過敏性肺炎の原因真菌でもありシックハウス症候群の一つとしても注目されている。同一の菌種が一方では重篤な感染症を引き起こし、もう一方ではアレルギー反応を惹起するという興味深い真菌であるが、その要因には生体と真菌の接触の結果生じる真菌の形態や形質変化と、生体側の免疫応答の変化が関与していることを我々は明らかにしてきた。生体との接触でおきる最も大きな変化は、グルクロノキシロマンナン抗原量の増加であり、この結果、<I>Trichosporon</I>は生体からの免疫能を回避し、生体環境に順応して潜伏し、宿主の免疫能が低下すると播種性感染症へと進展するこが予想される。<BR>このセミナーでは、環境に常在する真菌が、ヒトとのかかわり合いの結果、どのように変化して、様々な病態、すなわち、過敏性肺炎や日和見感染症を発現するのか、そのメカニズムについて解説し、さらに、最近の全国の疫学調査の結果から明らかになってきている、本症の発症に地域性はあるのか、新しい抗真菌薬が開発された今日、以前と比べ本症の死亡率は改善されたのか、以前から問題とされているブレイクスルー感染症があるのか、血清β―グルカン値が上昇するのか、<I>Trichosporon</I>の薬剤感受性に変化が生じているのか、など、臨床上の重要な問題点にも迫る。

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