著者
奥山 純子 青木 恵美 中山 徹
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.60, pp.275, 2008

【目的】多くの高齢者は介護が必要になっても、住み慣れた地域で暮らし続けることを望んでいる。そのためには、高齢者が居住する地域に、地域生活を可能とする介護サービス等の居住環境整備が必要である。しかし介護保険制度では、民間事業者の自由参入によりサービスの整備が進められてきたため、すべての地域に必要なサービスが整備されているとは限らない。住民の望むサービスを地域に整備するためには、行政の計画を民間主導で実現させるのではなく、地域住民の参加のもと整備を進める必要がある。しかし、これまでにそのような事例は数少ない。そこで本研究では、高齢者の地域生活を支える高齢者福祉施設を"住民参加"により計画・開設した事例に着目し、施設の開設過程や開設後の運営状況を把握することで、"住民参加"による高齢者福祉施設の"開設後の利点"や"開設過程での課題"について明らかにすることを目的とする。<BR>【方法】"住民参加"により計画・開設された高齢者福祉施設の代表者に聞き取り調査を実施した。調査対象は、介護保険給付の対象とされるサービスである7事業者と、地域の高齢者の介護予防・生活支援を目的として設置されたサービスである6事業者、調査時期は2007年2月から10月である。<BR>【結果】"住民参加"による施設開設の利点は、空白地に施設を設置できること、地域住民が施設計画に関わることで施設に対する意識が向上すること、介護保険の対象外である高齢者が利用できる施設を設置できること、介護保険以外にも多様なサービスを導入し利用者の要望に対応できること等が挙げられた。一方、施設開設の過程における問題点は、資金調達、用地・物件の確保、行政との協議の段階で多くみられた。

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