著者
井上 芳恵 中山 徹
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.55, pp.218, 2003

【目的】近年全国的に中心市街地を始めとした各地域で大型店の撤退が相次ぎ、消費者、地域経済に大きな影響を与えている。そこで、大型店撤退による消費者の買い物行動の変化、撤退後の買物の満足度、またどのような消費者層に影響を及ぼしているかについて、現状把握、分析を行うことを目的とする。【方法】大型店倒産によって全店舗が一時休業し、その後未だ再開のめどが経たない店舗の立地する熊本県人吉市において、消費者に対してアンケート調査を行った。調査対象地は、撤退大型店立地する中心商店街周辺及び、そこから1.2kmほど離れた幹線道路沿道の郊外大型店周辺の2地区とし、留置式自記式アンケート調査を平成14年4月に実施した。配布総数732票に対して、有効回答数は458票、有効回答率62.6%であった。【結果】大型店撤退前後の買物場所の変化では、撤退大型店を利用していた人が、撤退後には食品中心スーパー、郊外大型店などに買物場所を変えている。それにともない買物理由も、商品に関する理由から利便性に関する理由に変化しており、やむを得ず利用している消費者も見られた。大型店撤退による買物の満足度は、中心商店街周辺に居住する高齢世代ほど、不便さ、不満足さを強く感じている。その背景として、それらの消費者は、従来撤退大型店の利用頻度が高く、買物には徒歩、自転車を利用する人が多かったため、近隣の大型店撤退により日常生活に多大な影響を受けている。今後の課題として、大型店の郊外出店が中心市街地からの大型店撤退と関連しており、消費者の利益を追求する際には、撤退時の消費者の影響についても検討する必要があると考えられる。

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