- 著者
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荒木 裕子
山本 直子
- 出版者
- 一般社団法人 日本家政学会
- 雑誌
- 一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
- 巻号頁・発行日
- vol.55, pp.75, 2003
【目的】これまでに演者らは、極地冒険家の携帯食について設計・開発を行い実際に共用された携帯食の成分分析等を行い報告してきた。今回は、演者らが設計開発した携帯食が実際に極地冒険に供された際の利用状況を調査し、併せて日常生活とは異なる苛酷な環境下での食物摂取ついて検討したので報告する。【方法】冒険家大場満郎氏の1997年の北極海単独徒歩横断に際し、演者らが設計開発した携帯食の利用状況について調査した。調査方法は大場氏の冒険中の克明な記録をもとに調査し、併せて大場氏への聞き取り調査をおこなった。【結果】主食となる朝・夕食用A食、昼食用B食の2種とも冒険中の摂取量に変動が見られ、冒険開始直後から約2週間は予定摂取量の50~70%にとどまり、一日の摂取エネルギーも3200~4500Kcalと低かった。このことは環境の変化と高脂肪食が身体に順応していないためと心理的ストレスからの食欲不振と推測された。冒険の中盤からは食欲が増進し、予定摂取量の20~30%増の摂取がみられた。また、冒険終盤で外気温が高くなると食欲が減少するという気温と食欲との微妙な関係もみられた。現地での喫食方法はA食では微温湯を添加し5分ほど蒸らしてから喫食していたが凍結乾燥品の復元状態には問題はなかった。B食は予め凍結による硬化を防止するため油脂等を混入して調製したが、実際にはポケットに入れ体温で硬化を防止した。主食以外の食糧は乾燥肉や即席の汁粉、コーンスープなどであったが主食とこれらの食糧をうまく組み合わせることにより単調な食事に変化をもたせていた。また、不足しがちなビタミンを補給するためにサプリメントも利用されていた。