- 著者
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小林 泰介
北脇 裕士
阿依 アヒマディ
岡野 誠
川野 潤
- 出版者
- 宝石学会(日本)
- 雑誌
- 宝石学会(日本)講演会要旨
- 巻号頁・発行日
- vol.32, pp.11, 2010
最近、アフリカのモザンビーク産と称されるルビーを検査する機会が増えている。GAAJ-ZENHOKYOラボでも、実際の鑑別ルーティンで、2009年3月頃からこのようなモザンビークの新鉱山産であると考えられるルビーを見かけるようになった。今回はこれまで検査したモザンビーク産と思われるルビーの鑑別特徴について報告する。<BR>拡大検査では、タンザニアWinza産のルビーに見られるような顕著な双晶面や、液体-液膜インクルージョン、ネガティブ・クリスタル、透明および黒色不透明な結晶インクルージョン、および微小インクルージョンなどが見られた。表面近くに存在していた結晶インクルージョンをラマン分光分析および蛍光X線組成分析により同定した結果、最も一般的に見られる結晶は角閃石(パーガサイト)であることがわかったほか、アパタイトも確認された。<BR>赤外分光スペクトルには、3081cm-1と3309cm-1の吸収がペアになったブロードな吸収バンドが現れる。これらの吸収は、フラクチャー中に存在するベーマイトに起因する可能性があり、高温で加熱されたルビーにはこのような吸収バンドは現れない。顕著な3161cm-1の吸収ピークがタンザニア Winza産のルビーの赤外吸収スペクトルに特徴的に現れるように、このようなペアになった赤外吸収スペクトルは非加熱のモザンビーク産ルビーの識別に役立つと思われる。さらに、ベーマイトに起因すると考えられる2074cm-1と1980cm-1の弱い吸収が付随する場合もある。<BR>蛍光X線分析により化学組成を分析した結果、主元素であるAl2O3のほか、酸化物として0.3~0.8 wt%程度のCrと0.2~0.5 wt%程度のFeが検出された。このようなFeの含有量は、ミャンマー産やマダガスカル産などの非玄武岩起源のものよりも高く、タイ産のような玄武岩起源のものよりは低い。LA-ICP-MSによる微量元素の分析結果では、タンザニア Winza産のルビーの場合に比べ、Ti,V,Cr,Gaの含有量が高く、Feの含有量が低い事がわかった。<BR>モザンビーク産ルビーは、地理的地域が近接していることもあり、タンザニアのWinza産ルビーと類似した宝石学的特徴を有しているが、分光スペクトル及び微量元素分布を詳細に比べることによって両者の識別が可能であることがわかった。今回はこれに加えて、非加熱のモザンビーク産ならびにタンザニア産ルビーの原石を用いた加熱実験を試み、処理に伴う外観、内部特徴および分光スペクトルの変化などについても検証した。