著者
山崎 彩夏 武田 庄平 黒鳥 英俊
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 Supplement
巻号頁・発行日
vol.23, pp.85, 2007

昨今は動物福祉の観点から、飼育動物の特性を考慮し、その欲求を理解した飼育環境の改善が求められるようになってきた。動物本来の行動がより発現されるような刺激を備えた飼育環境では、より主体的な行動の時間配分の表出が促され、行動レパートリーが増加することが知られている。本研究では、2005年3月に多摩動物公園(東京都日野市)に新設されたオランウータン飼育施設において、より多様で、立体的かつ広大化するという飼育環境の変化が、飼育下オランウータンの行動にいかなる質的・量的変容を及ぼすかに関し検証することを目的とし、中長期的・縦断的な観察を行ってきた。旧施設と比較し、新施設では、「飛び地」と称される約50本の自然林に覆われた面積2,092_m2_の放飼場、および「スカイウォーク」と称される全長152mのタワーが設置され、オランウータンによる、3次元空間のより多様な利用が可能となった。観察対象はボルネオオランウータン3個体(ジプシー;メス,推定51歳、チャッピー;メス, 34歳, ポピー;オス,6歳)とし、2005年3月から2006年11月の期間のうちの計156日、9:30~15:30の時間帯において、観察対象個体を1分間毎に走査するスキャンサンプリング法を用いて観察し、各観察対象個体の行動と利用空間を、瞬間サンプリング法を用いて記録した。観察した行動は、採食・休息・移動・社会的行動の各カテゴリーに分類した。その結果、新施設移動直後に活動性の低下傾向が確認され、新奇環境に対する反応性がみられた。その後は、採食に費やす時間の増加、移動と社会的行動に費やす時間の減少が示された。また、移動行動レパートリーの大幅な増加、特に立体的な空間を移動する際の行動レパートリーの増加が確認された。以上から、複雑な放飼場の構造と利用可能な空間の増大、採食対象の増加が、オランウータンの行動パターンに影響を与えたことが示唆された。

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こんな論文どうですか? 飼育環境の変化と飼育下オランウータンの行動パターン変容との関連性(山崎 彩夏ほか),2007 https://t.co/Bq1O6mPEVz 昨今は動物福祉の観点から、飼育動物の特性を考慮し、その欲求を理解した飼育環境の改善…
こんな論文どうですか? 飼育環境の変化と飼育下オランウータンの行動パターン変容との関連性(山崎 彩夏ほか),2007 https://t.co/Bq1O6n6HXz 昨今は動物福祉の観点から、飼育動物の特性を考慮し、その欲求を理解した飼育環境の改善…
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