著者
橋爪 伸子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.18, pp.4, 2006

<BR>[目的] 牛蒡餅は今日和菓子として一般的なものではないが、江戸時代には寛永20年(1643)の『料理物語』を初め諸料理書に散見される。それによれば牛蒡餅は、糯米粉、粳米粉と煮熟した牛蒡を混ぜて作った生地を、揚げた後蜜または煎じ砂糖に浸けるという菓子である。この揚げて蜜に浸けるという特徴的な調理法は、日本古来の菓子には一般的ではなく、異国の菓子にみられることから、牛蒡餅の起源も伝来菓子の可能性がある。しかしながら、その由来についてはこれまで追求されてこなかった。そこで本報では、牛蒡餅の起源や実態について検討することを目的とする。<BR>[方法] 牛蒡餅の記述がみられる料理書、諸記録等による文献調査に加え、唯一牛蒡餅が現存する長崎県平戸で、製造業者へ聞き取り調査を行った。<BR>[結果] 牛蒡餅の起源と考えられる菓子は二つあり、いずれも江戸時代以前に伝来した異国の菓子で、揚げて蜜に浸けるものである。一つは南蛮菓子ひりょうずの根源とされる「フィリョス」、もう一つは朝鮮菓子「薬果」である。後者は日本では「くわすり」等と記され、安土桃山から江戸時代初頭にかけて饗応や茶会等で用いられた。<BR> 牛蒡餅の製法が収録されている主な料理書は、上記『料理物語』のほか、元禄2年(1689)の『合類日用料理指南抄』等比較的初期のもので、その後享保3年(1718)以降に刊行された『御前菓子秘伝抄』を初めとする菓子製法書にはみられないことより、この頃には次第に衰退の途にあったと考えられる。一方、元禄16年(1703)の『筑前国続風土記』では、牛蒡餅が筑前博多の土産にあげられていることから、牛蒡餅の消長には地域差があったことが考えられる。

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