著者
高橋 裕介 川久保 篤志
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.66, 2007

<BR> I .はじめに<BR> 本発表でとりあげる神楽とは,能の影響を色濃く受けた演劇風の里神楽のことである.近世初頭に佐太神社(松江市)で成立した神能(演劇風神楽)は,徐々に伝播し現在では出雲はもちろん西日本全域で広く舞われている.1970年に行われた大阪万博,1975年の文化財保護法改正などを契機として,島根県では現在でも大きな盛り上がりを見せている.江戸時代における神楽は神職のものであったが,1871年(明治3年)に松江藩から神能演舞禁止令が出されると,担い手は農民へと移行し,その後今日まで農村を中心に伝承されてきた.しかし戦後,高度経済成長期を通じて農村社会は大きく変貌し,その影響は神楽社中にも及んだ.そこで今発表では,神楽社中の変化を農村社会の変化を関連付け分析を進めていく.<BR> II .対象地域と対象社中<BR> 研究対象地域は,島根県雲南市大東町である.大東町は松江市から南へ車で30分ほどの山間部に位置する.大東町ではかつて林業が盛んであったが,現在は兼業化が進み成人の多くがへ通勤している.<BR> 現在大東町には活動を行っている神楽社中5つある.神楽社中はおよそ10~20人で組織されており,平均年齢は50歳代である.主な活動としては,秋祭りで神楽奉納,各種イベントへの出演,また最近では神楽の演大会へのなども行っている.<BR> III .社中構成員の属性と神楽社中の変容<BR> 大内(2002)はイエ制度のもとにある戦後農村社会において,昭和ヒトケタ世代(世帯主),後継者,高齢者,女性という4つの社会層を確認し,昭和ヒトケタ世代はイエ制度のライフサイクルに従った最後の世代であり,後継者のライフコースはイエ制度から離れていったと述べた.筆者が,小河内社中の拠点とする下小河内集落において実施した神楽経験を中心としたライフヒストリー調査の分析によると,昭和ヒトケタ世代(第一世代),後継者世代(第二世代),さらにその次の第三世代という3つの異なるライフコースを確認することができた.神楽社中の活動のあり方は,どの世代を中心に社中が結成されているかに強い影響を受ける.小河内社中は,大正時代に結成された神楽社中で,その中心となっているのは,山上さん講に参加しているイエ出身のものである.しかし1980年代以降そのような枠組みは変化し,現在では集落外から社中に参加するものもいる.<BR> 本発表では小河内社中の社中員のライフヒストリー分析を中心に神楽社中の変容を述べていく.

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こんな論文どうですか? 農村社会の変容と神楽伝承:島根県雲南市大東町小河内社中に注目して(高橋 裕介ほか),2007 https://t.co/cgTTFVYMf5 <BR> I .はじめに<BR> 本発表でとりあげる神楽とは,能の影響を色濃く受け…
こんな論文どうですか? 農村社会の変容と神楽伝承:島根県雲南市大東町小河内社中に注目して(高橋 裕介ほか),2007 https://t.co/cgTTFVGD0X <BR> I .はじめに<BR> 本発表でとりあげる神楽とは,能の影響を色濃く受け…

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