著者
山田 和彦 永田 靖典 高橋 裕介 莊司 泰弘 鈴木 宏二郎 今村 宰 秋田 大輔 石村 康生 中篠 恭一
出版者
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究では、超小型衛星に搭載可能な姿勢センサ群を開発し、ISSから放出される超小型衛星EGGを利用し、大気の影響を無視できない超低高度軌道での軽量膜面を有する宇宙機の挙動の実測を行った。超小型衛星EGGの運用において、希薄気体中における軽量な膜面に働く大気抵抗の影響により軌道が変更することを確認するなど、そのダイナミクスを理解するためや解析ツール開発の参照となる貴重な実測データを得ることができた。これらのデータは、運用終了時の衛星を非デブリ化する技術等、将来、超小型衛星にとって重要な技術開発のために役立つと期待される。
著者
高澤 秀人 末永 陽一 宮下 岳士 平田 耕志郎 若林 海人 高橋 裕介 永田 靖典 山田 和彦 TAKASAWA Hideto SUENAGA Yoichi MIYASHITA Takashi HIRATA Koshiro WAKABAYASHI Kaito TAKAHASHI Yusuke NAGATA Yasunori YAMADA Kazuhiko
出版者
宇宙航空研究開発機構(JAXA)
雑誌
宇宙航空研究開発機構研究開発報告: 大気球研究報告 = JAXA Research and Development Report (ISSN:24332216)
巻号頁・発行日
vol.JAXA-RR-22-008, pp.37-50, 2023-02-17

深宇宙探査を対象とした新しいサンプルリターンミッションに向けて薄殻エアロシェル型カプセルが提案されている.本カプセルのコンセプトにおける一番の特徴は,軽量・大面積エアロシェルを用いることで空力加熱を避けることである.本カプセルはパラシュートレスでの帰還が想定されていることから全速度域で空力的に安定に飛行することが求められている.実機は,直径0.8m,総質量10kg, 機軸周りの慣性モーメント0.58kg m2, 機軸垂直周りの慣性モーメント0.32kg m2のカプセルを想定している.薄殻エアロシェル型カプセルの低速域における動的不安定性を評価するために,2022年7月1日にゴム気球を用いた自由飛行実験RERA(Rubber balloon Experiment for Reentry capsule with thin Aeroshell) を実施した.気球実験機として,直径0.8m,総質量1.56kg,機軸周りの慣性モーメント0.033kg m2, 機軸垂直周りの慣性モーメント0.020kg m2のカプセルを使用した.カプセルは高度25kmにおいてゴム気球から切り離され,自由飛行を開始し,海上着水した.実験中のオンボードセンサーによる計測データとカメラによる撮影画像は地上局へ送信された.自由飛行においてカプセルは姿勢振動していたもののピッチ方向に縦回転することはなかった.自由飛行時のカプセル周りの流れ場はマッハ数0.15以下,レイノルズ数10(exp 5) オーダーであった.このことから再突入時と同オーダーのレイノルズ数環境下で試験を実施できた.実験機は低速域においてピッチ・ヨー方向の振動運動が発散しないことが示唆された.
著者
高橋 裕介 川久保 篤志
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.66, 2007

<BR> I .はじめに<BR> 本発表でとりあげる神楽とは,能の影響を色濃く受けた演劇風の里神楽のことである.近世初頭に佐太神社(松江市)で成立した神能(演劇風神楽)は,徐々に伝播し現在では出雲はもちろん西日本全域で広く舞われている.1970年に行われた大阪万博,1975年の文化財保護法改正などを契機として,島根県では現在でも大きな盛り上がりを見せている.江戸時代における神楽は神職のものであったが,1871年(明治3年)に松江藩から神能演舞禁止令が出されると,担い手は農民へと移行し,その後今日まで農村を中心に伝承されてきた.しかし戦後,高度経済成長期を通じて農村社会は大きく変貌し,その影響は神楽社中にも及んだ.そこで今発表では,神楽社中の変化を農村社会の変化を関連付け分析を進めていく.<BR> II .対象地域と対象社中<BR> 研究対象地域は,島根県雲南市大東町である.大東町は松江市から南へ車で30分ほどの山間部に位置する.大東町ではかつて林業が盛んであったが,現在は兼業化が進み成人の多くがへ通勤している.<BR> 現在大東町には活動を行っている神楽社中5つある.神楽社中はおよそ10~20人で組織されており,平均年齢は50歳代である.主な活動としては,秋祭りで神楽奉納,各種イベントへの出演,また最近では神楽の演大会へのなども行っている.<BR> III .社中構成員の属性と神楽社中の変容<BR> 大内(2002)はイエ制度のもとにある戦後農村社会において,昭和ヒトケタ世代(世帯主),後継者,高齢者,女性という4つの社会層を確認し,昭和ヒトケタ世代はイエ制度のライフサイクルに従った最後の世代であり,後継者のライフコースはイエ制度から離れていったと述べた.筆者が,小河内社中の拠点とする下小河内集落において実施した神楽経験を中心としたライフヒストリー調査の分析によると,昭和ヒトケタ世代(第一世代),後継者世代(第二世代),さらにその次の第三世代という3つの異なるライフコースを確認することができた.神楽社中の活動のあり方は,どの世代を中心に社中が結成されているかに強い影響を受ける.小河内社中は,大正時代に結成された神楽社中で,その中心となっているのは,山上さん講に参加しているイエ出身のものである.しかし1980年代以降そのような枠組みは変化し,現在では集落外から社中に参加するものもいる.<BR> 本発表では小河内社中の社中員のライフヒストリー分析を中心に神楽社中の変容を述べていく.
著者
高橋 裕介
出版者
北海道大学
雑誌
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化)
巻号頁・発行日
2018

大気再突入時に高温プラズマに包まれた宇宙機が、地上局やデータ中継衛星との通信途絶現象(通信ブラックアウト)に陥ることは大きな問題である。その一方で、再突入機近傍のプラズマ諸量分布や電磁波挙動の正確な予測が難しく、通信ブラックアウト低減に繋がる知見の探索が困難な状況である。したがって、この問題を回避・緩和するために通信ブラックアウト低減化技術は必要である。いま表面触媒性を用いた宇宙機後流プラズマ密度低下を利用することによる通信ブラックアウト低減が提案されている。本研究では表面効果による通信ブラックアウト低減化メカニズムおよび低減化技術の指針を見出すことを目的とする。本年度では、ドイツ航空宇宙センター(DLR)に滞在し通信ブラックアウト低減化の研究を実施した。DLR研究者との議論の中で、これまで取り組んできた表面触媒性とは別のメカニズムを利用した新しい通信ブラックアウト低減化手法を提案した。これは冷却ガスを再突入機表面から噴出して空力加熱低減する技術(フィルムクーリング)を応用したものである。とくにここではフィルムクーリングによる低減化の実現可能性を数値解析的手法によって調べた。本課題の基課題となる研究課題 (若手研究B17K14871)では表面触媒性による通信ブラックアウト低減化の実験的実証を行った。このメカニズムを本研究課題では数値解析的手法によって次の通り明らかにした:(1)表面触媒によって生じる分子が再突入機後流に流出する。(2)後流において分子の増加が原子種の不足を招く。(3)原子種を補う方向に電子の再結合反応が促進することで、電子が低減する。(4)電子の低減によって通信電波の伝播が緩和される。
著者
高橋 裕介 小池 太輝 大島 伸行
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
年次大会
巻号頁・発行日
vol.2018, 2018

<p>Aerodynamic heating of an inflatable reentry vehicle, TITANS, which is one of the innovative reentry technologies, was investigated using a tightly coupled approach involving computational fluid dynamics and structure analysis. A strong shock wave at the front and a wake structure behind the TITANS vehicle were clarified. It was indicated that thermochemically nonequilibrium flow appears for a case of the peak heating altitude in the trajectory of mission. A heat flux distribution due to high temperature gradient near deformed surface was uncovered. The heat flux at the capsule part of the TITANS vehicle increased, while that on the membrane decreases. This is because the shock wave formation changed by the membrane deformation. In addition, it was indicated that wrinkles on the membrane formed by the deformation causes increase in heat flux.</p>
著者
齊藤 明 岡田 恭司 高橋 裕介 斎藤 功 木下 和勇 木元 稔 若狭 正彦
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.48100337, 2013

【はじめに、目的】 膝関節筋は中間広筋の深層に位置し、大腿骨遠位前面を起始、膝蓋上包を停止とする筋である。その作用は膝関節伸展時の膝蓋上包の牽引・挙上とされ、機能不全が生じると膝蓋上包が膝蓋骨と大腿骨の間に挟み込まれるため拘縮の原因になると考えられている。しかしこれらは起始、停止からの推論であり、膝関節筋の機能を直接的に示した報告はない。本研究の目的は膝関節筋が膝蓋上包の動態に及ぼす影響およびその角度特性を超音波診断装置を用いて明らかにすることである。【方法】 健常大学生16名(男女各8名:平均年齢22歳)32肢を対象とした。測定肢位は筋力測定機器Musculator GT30(OG技研社製)を使用し椅子座位にて体幹、骨盤、下腿遠位部をベルトで固定した。動作課題は膝関節伸展位、屈曲30°位、屈曲60°位での等尺性膝伸展運動とし、実施順は無作為とした。いずれも最大筋力で3回行い、このときの膝関節筋の筋厚および膝蓋上包の前後径、上方移動量を超音波診断装置Hi vision Avius(日立アロカメディカル社製)を用いて測定した。測定には14MHzのリニアプローブを使用しBモードで行った。膝関節筋および膝蓋上包の描写は上前腸骨棘と膝蓋骨上縁中央を結ぶ線上で、膝蓋骨上縁より3cm上方を長軸走査にて行った。膝関節筋筋厚は筋膜間の最大距離、膝蓋上包前後径は膝関節筋付着部における腔内間距離を計測し、等尺性膝伸展運動時の値から安静時の値を減じた変化量を求めた。膝蓋上包上方移動量は安静時の画像上で膝関節筋停止部をマークし、等尺性収縮時の画像上でその点の移動距離を計測した。各膝関節角度間での膝関節筋筋厚、膝蓋上包の前後径、上方移動量の差を検定するため、一元配置分散分析およびTukey多重比較検定を行った。また各膝関節角度において膝蓋上包前後径および上方移動量を従属変数、膝関節筋筋厚、年齢、体重を独立変数とした重回帰分析(stepwise法)を行った。統計解析にはSPSS19.0を使用し、有意水準5%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】 対象者には事前に研究目的および測定方法を十分に説明し書面で同意を得た。【結果】 膝関節筋筋厚は伸展位3.21±0.72mm、屈曲30°位2.74±0.71mm、屈曲60°位2.03±0.49mmで伸展位が屈曲30°位、60°位に比べ有意に厚く(それぞれp=0.014、p<0.001)、屈曲30°位が屈曲60°位より有意に厚かった(p<0.001)。膝蓋上包前後径は伸展位2.62±0.94mm、屈曲30°位2.15±0.98mm、屈曲60°位0.44±0.30mmで伸展位および屈曲30°位が屈曲60°位より有意に大きかった(いずれもp<0.001)。膝蓋上包上方移動量は伸展位13.33±4.88mm、屈曲30°位10.44±2.65mm、屈曲60°位5.63±2.02mmで伸展位が屈曲30°位、60°位に比べ有意に大きく(それぞれp=0.041、p<0.001)、屈曲30°位が屈曲60°位より有意に大きかった(p<0.001)。重回帰分析の結果、膝蓋上包前後径のモデルでは調整済みR²値は、伸展位で0.659、屈曲30°位で0.368であった(p<0.001)。膝関節筋筋厚の標準偏回帰係数は伸展位で0.752(p<0.001)、屈曲30°位で0.623(p<0.001)であり、いずれも正の連関が認められた。屈曲60°位では有意な連関は得られなかった。膝蓋上包上方移動量のモデルでは調整済みR²値は、伸展位で0.548であった(p<0.001)。膝関節筋筋厚の標準偏回帰係数は0.750(p<0.001)であり、正の連関が認められた。屈曲30°位、60°位では有意な連関は認められなかった。【考察】 筋厚の結果から膝関節筋はより伸展位で収縮する性質があると考える。また屈曲60°位においても2.03mmの変化が得られたことから、屈曲位でも収縮することが示された。膝蓋上包前後径および上方移動量は伸展位、屈曲30°位に比べ屈曲60°位で有意に小さかった。これは膝関節屈曲時に膝蓋骨と共に膝蓋上包が遠位に移動するため、その緊張が高まり後方および上方への変化量が小さかったと考える。しかし膝関節筋の収縮は認められることから、屈曲60°位においても膝蓋上包への張力は作用しているものと推察される。重回帰分析の結果、膝関節伸展位では膝関節筋の収縮は膝蓋上包前後径、上方移動量に影響することが示され、解剖学的知見から予測された作用と一致する結果であると考えられる。【理学療法学研究としての意義】 本研究は膝関節筋が膝蓋上包を牽引、挙上することを超音波画像より直接的に示したものであり、基礎データとして有意義であると考える。今後は膝関節拘縮や変形性膝関節症との関連性や膝関節可動域制限への介入の新たな視点等、臨床への応用が期待される。