- 著者
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下川 真季
上條 隆志
加藤 拓
樋口 広芳
- 出版者
- 日本森林学会
- 雑誌
- 日本林学会大会発表データベース
- 巻号頁・発行日
- vol.115, pp.P5036, 2004
2000年7月の噴火以降、亜硫酸ガスの噴出が続く三宅島ではスギの枯死が顕著であり、今後、島内の多くのスギ植林地に何らかの植生回復・緑化手段が講じられる可能性がある。そこで本研究では、三宅島におけるスギ人工林の土壌中に含まれる埋土種子集団について、発芽可能な種子数および種組成を明らかにし、その植生回復・緑化利用に対する可能性を検討した。2002年12月、島内のスギ人工林において噴火により堆積した火山灰(以下、火山灰)と噴火前の埋没土壌(以下、表土)を採取した。2003年4月、表土と火山灰、および表土と火山灰の混合物(以下、混合)を用いて、播き出し実験を開始した。定期的に発芽数の測定を行い、さらに出現個体を同定した。表土試料から平均2776±90個体/_m2_(値は現地換算したもの)が発芽し、28種が同定できた。一方、火山灰試料からは85±37個体/_m2_が発芽し、6種が同定できた。また、混合試料からは 1912±638個体/_m2_が発芽し、31種が同定できた。主な出現種は、草本ではダンドボロギク・ハシカグサ・コナスビ・シマナガバヤブマオ・ドクダミ・カヤツリグサ類、木本ではカジイチゴ・ヤナギイチゴなどであり、三宅島の二次遷移初期にみられる種が多く見られた。三宅島での一次遷移初期にみられるハチジョウイタドリやハチジョウススキ、オオバヤシャブシなどの先駆種は全く出現しなかった。また、出現した種のうち、外来種はダンドボロギクの一種のみと少なく、在来種が多かった。以上のことから、三宅島のスギ人工林における埋土種子集団は、種子数・種組成ともに植生回復・緑化利用に対して大きな可能性をもつことが明らかとなった。