著者
北澤 毅
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.38-54, 2017

<p>本稿の目的は, 教育社会学領域における構築主義研究の展開をレビューするとともに, 今後の課題を論じることである. そのためにまずは, 本稿における構築主義に対するスタンスを明らかにした. 簡潔に述べるなら, OG批判を受けて, 言説実践は実在するが, 言説が想定する社会問題の実在性は問わないという方法的立場を採用した. それを受けて「実在/構築」という分類軸を設定し, 教育社会学領域における構築主義研究の特徴と課題を浮き彫りにすることを目指した.</p><p>まずは構築主義前史として, 山村賢明と徳岡秀雄の研究に着目し, それらがどのような意味で構築主義の前史として位置づくかを論じた. そのうえで, 1980年代から始まる教育社会学領域における構築主義研究の系譜を, 教育問題の構築過程の研究と教育問題言説研究とに大別し, それぞれの研究系譜を「実在/構築」という軸から論じた. なかでも, 教育問題言説研究を, 言説とは別に状態の実在性を想定する「言説批判分析」と, 言説が現実を作り出すという言語論的転回以降の言説観に基づく「言説分析」とに峻別し, それぞれの特徴を論じることに力点をおいた. それを受けて最後に, 言説が現実を作るというテーゼは, 構築主義が研究対象とする日常生活世界に適用されるだけでなく, 構築主義研究それ自体にも当てはまることを強調し, 構築主義研究の発展のためには新たな分析概念の創出が不可欠であると論じた.</p>

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