著者
小川 日出丸 渥美 郁男
出版者
宝石学会(日本)
雑誌
宝石学会誌 (ISSN:03855090)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, 2018-06-10

<p>昨年、無色のメレダイヤモンド 211 個入りのロットを検査する機会を得た。パーセルには、 Size 1.25-1.35mm Color D-E-F Clarity VS-VVS Shape Round Full Cut の表記があった。販売者であるアメリカの R 社 によると内容は CVD Synthetic Diamond で、 価格は600USドル/ctとのことであった。ちなみ に同等の天然メレダイヤモンドとほぼ同じくら いの価格相当と思われる。 </p><p>一個の重量は 0.008~0.012ct であるこれら の石について、FT-IR を使用して赤外分光検 査をおこなった。その結果、12 個は明瞭なⅠ 型を示し検査の結果は天然石であった。残り の 199 個はⅡ型に分類されたので、検査を継続した。</p><p>拡大検査では、塊状や棒状の金属と思われるものや、松枝状などの内包物がみられた。 内包物によっては磁石に引き寄せられ、磁性 を示す石もあった。</p><p>フォトルミネッセンス(PL)測定など詳細な検 査をおこなった結果、高温高圧法による合成 ダイヤモンドであることが判明した。またⅡ型 のなかに天然石が1個確認された。</p><p>以上、天然石が混入していることや CVD 法 による合成石が確認できなかったことなど、販売者の言と異なるメレサイズダイヤモンドのロットであった。 </p><p>無色系のメレサイズ HPHT 合成ダイヤモンドについてはすでに報告(注 1)があり、分析 結果や特徴などについて紹介されている。 今回検査した石のカラーグレード(注2)は D-E-F となっていたが、D カラーは数個でほと んどが F から H であり、僅かに色を持っていた。 色調ごとに分類したところ、青色・黄色・緑色・ 灰色系になった。赤外分光、PL スペクトルなどに違いがないか調べた。 </p><p>クラリティは VS-VVS の表示であったが、内包物は多くみられた。内包物の形態や、未研磨面に残された結晶面に特徴がないか観察 した。</p><p>(注 1)</p><p> 北脇、久永、山本、岡野、江森、2016.1 無色系メレサイズ HPHT 法合成ダイヤモンド CGL 通信 No.30 </p><p>古屋正貴 2015.12 合成ダイヤモンド アップデ イト Gem Information W.Soonthorntikul P.Siritheerakul 2015summer Near-Colorless Melee Sized HPHT Synthetic Diamonds Identified in GIA Laboratory Gems&Gemology </p><p>(注 2) </p><p>宝石鑑別団体協議会(AGL)の規約により、合成ダイヤモンドのグレーディングはおこなわない</p>

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