- 著者
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山本 悦子
阪上 愛子
澤田 参子
原 知子
東根 裕子
八木 千鶴
- 出版者
- 日本調理科学会
- 雑誌
- 日本調理科学会大会研究発表要旨集
- 巻号頁・発行日
- vol.30, 2018
【目的】平成24年から日本調理科学会「次世代に伝え継ぐ 日本の家庭料理」の研究から山海に恵まれ商都として栄えた大阪府内に1960年から70年頃までに定着した家庭料理・郷土料理の「主菜の特徴」を抽出することを目的とした。<br>【方法】大阪府の行政区分、日本の食生活全集「聞き書大阪の食事」の分類を参考に8地域(泉南・泉北・南河内・中河内・北河内・大阪市・三島・豊能)に分け、その土地に30年以上暮らしている27名を対象に聞き書きを行った。<br>調査時期は2013年11月から2015年9月、方法等は学会ガイドラインに則った。<br>【結果】物流や商業の中心地大阪は「天下の台所」とよばれた。昆布は北海道から北前船で大阪・堺の港に入り、かつおぶしは、薩摩・土佐・紀州から入り、「だし文化」が生まれた。だし巻き卵・小田巻蒸し・関東煮(かんとだき)・どて焼き・ハリハリ鍋などは、だしを利用した主菜である。朝食やお弁当のおかずに作るだし巻き卵は、甘い関東の卵焼きに比して、だしの旨みと塩味(淡口醤油)で味つけされる。小田巻蒸しは、うどんの入っただしたっぷりの茶碗蒸しである。大阪の商家では祝膳に出された。鶏肉、えび、なると、干しいたけ、みつば、ゆずなどをを入れる。関東煮は江戸風味の濃口醤油のだしではなく、淡口醤油が主体のすっきりした味である。大阪では具材に鯨の皮の「ころ」や牛すじ肉、タコ、煮込みちくわ、丸天、ごぼう天などが好まれる。どて焼きは牛すじ肉を茹で、昆布だし、白味噌やみりんでじっくり煮込んだ料理。ハリハリ鍋はくじら肉(尾の身・赤身)と水菜だけのシンプルな鍋で、かつお昆布だしに淡口醤油と酒だけで味つけし、さっと煮て食する。大阪のコナ文化の代表である、きつねうどん・お好み焼き・たこ焼きにもだしは欠かせない。