著者
八木 千鶴 大喜多 祥子 奥山 孝子 樋上 純子 細見 和子 山本 悦子 米田 泰子 渡辺 豊子
出版者
The Japan Society of Cookery Science
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.112-121, 2015
被引用文献数
1

微細米粉を用いたスポンジケーキ生地とスポンジケーキの物理的特性を,小麦粉を用いた場合と比較することによって明らかにした。<br> 1. DSC曲線では糊化エンタルピー変化は米粉の方が大きく,デンプンを充分に糊化するための熱量は,米粉の方が小麦粉より多く必要であった。<br> 2. 米粉スポンジケーキ生地の粘度は小麦粉スポンジケーキ生地より小さかった。<br> 3. 焼成時の内部温度は,加熱初期には米粉スポンジケーキ生地の方が小麦粉スポンジケーキ生地より高かったが,加熱後半には低くなり,米粉スポンジケーキの焼成時間は小麦粉スポンジケーキより長くかかった。<br> 4. 米粉スポンジケーキは小麦粉スポンジケーキより,質量は軽くなったが形状はほとんど差がなかった。また,米粉スポンジケーキの内部は軟らかかったが上面端部は硬かった。<br> 5. 官能評価の結果,米粉スポンジケーキは上面端部が硬く甘いため好まれなかったが,米粉スポンジケーキの内部は小麦粉スポンジケーキに比べ劣るものではないと考えられる。
著者
東根 裕子 阪上 愛子 澤田 参子 原 知子 八木 千鶴 山本 悦子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.32, 2021

<p>【目的】平成24年から実施している日本調理科学会「次世代に伝え継ぐ 日本の家庭料理」研究において,大阪府で聞き書きした家庭における「行事食」から,正月・祭りの食事を中心に考察する。【方法】調査地域は,大阪府の行政区分および日本の食生活全集「聞き書き大阪の食事」を参考に8地域(泉南・泉北・南河内・中河内・北河内・大阪市・三島・豊能)において,その土地に30年以上暮らしている27名を対象に聞き書きを行った。調査時期は2013年11月〜2015年9月、調査方法等は学会ガイドラインに則った。【結果・考察】出現した行事は、正月・七草・鏡開き・小正月・寒の入り・寒の中・節分・ひな祭り・春ごと・山行き・端午の節句・田植え休み・さなぶり・半夏生・七夕・土用の丑・天神祭り・夏祭り・お盆・藪入り・地蔵盆・彼岸(春・秋)・月見・秋祭り・だんじり祭り・亥の日・冬至・年越しなどであり、家族単位の行事では、誕生日・本復祝い・厄除け・満中陰・葬儀・運動会などがあった。正月料理では、すべての地域で雑煮、おせち料理を食べていた。しかし、その詳細は少しずつ異なり、雑煮のもちの形は丸がほとんどではあるが、角であったり、日によって異なる家庭もあった。用いられた共通の材料は、里芋(小芋)、大根(雑煮大根)であった。睨み鯛(塩焼きあるいは生)が供される地域も多く、祝い肴はごまめ、数の子、黒豆、たたきごぼうであった。また、大阪の代表的な祭りである天神祭りでは、はもやはも皮を使った料理、だんじり祭りでは、がざみとかんと炊き、大豆あんのくるみもちなどが準備され、現在も伝承されている。田植えが終わって農作業ひと段落の日には、半夏生もち、夏・秋祭りには鶏のすき焼きなどが準備されていた。</p>
著者
八木 千鶴 阪上 愛子 澤田 参子 原 知子 東根 裕子 山本 悦子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.29, 2017

【目的】平成24年からの日本調理科学会「次世代に伝え継ぐ 日本の家庭料理」研究から山海に恵まれ商都として栄えた大阪府の1960年から70年頃までに定着した家庭料理・郷土料理のおやつの特徴を抽出することを目的とした。<br />【方法】大阪府の行政区分、日本の食生活全集「聞き書大阪の食事」の分類を参考に8地域(泉南・泉北・南河内・中河内・北河内・大阪市・三島・豊能)に分け、その土地に30年以上暮らしている27名を対象に聞き書きを行った。調査時期は2013年11月から2015年9月、方法等は学会ガイドラインに則ったものである。<br />【結果】春:彼岸にぼたもち、上巳に菱餅、端午に柏餅や笹(葦・豊能)で包む粽、また餡入りよもぎ餅(ゆぐみ餅・中河内)や桜餅も作った。夏:糯米に「つぶし小麦」を加えた半夏生餅にきな粉をまぶし食べた。ところてんに黒蜜や白蜜をかけたもの、わらびもち、アイスキャンディー、しがらき、はったい粉などを家庭で作ったが購入した事もあった。秋:十五夜に手作りの月見団子とすすきを供えたが、餡で巻いた団子を購入する事もあった。秋祭りに大豆や枝豆の餡でくるむ「くるみ餅」、彼岸におはぎを作った。冬:餅入りのぜんざい、節分に大豆を煎り豆にし食べた。丁稚羊羹は山間の豊能の楽しみであった。寒の頃に餅を搗き、青のり、干しえび、漬け紫蘇・大豆(三島)や黒豆(豊能)などを入れかきもち、あられ(きりこ・中河内)やおかきにした。縁日では屋台のソース味のたこ焼き・いか焼きを買うのも楽しみであった。大阪は餅や地域の食材を利用しおやつを手作りしたが、季節の饅頭・団子を購入することも多くあった。心斎橋や難波では洋菓子店が出現し、ドーナツなど既製品を購入し始めた。
著者
山本 悦子 阪上 愛子 澤田 参子 原 知子 東根 裕子 八木 千鶴
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.30, 2018

【目的】平成24年から日本調理科学会「次世代に伝え継ぐ 日本の家庭料理」の研究から山海に恵まれ商都として栄えた大阪府内に1960年から70年頃までに定着した家庭料理・郷土料理の「主菜の特徴」を抽出することを目的とした。<br>【方法】大阪府の行政区分、日本の食生活全集「聞き書大阪の食事」の分類を参考に8地域(泉南・泉北・南河内・中河内・北河内・大阪市・三島・豊能)に分け、その土地に30年以上暮らしている27名を対象に聞き書きを行った。<br>調査時期は2013年11月から2015年9月、方法等は学会ガイドラインに則った。<br>【結果】物流や商業の中心地大阪は「天下の台所」とよばれた。昆布は北海道から北前船で大阪・堺の港に入り、かつおぶしは、薩摩・土佐・紀州から入り、「だし文化」が生まれた。だし巻き卵・小田巻蒸し・関東煮(かんとだき)・どて焼き・ハリハリ鍋などは、だしを利用した主菜である。朝食やお弁当のおかずに作るだし巻き卵は、甘い関東の卵焼きに比して、だしの旨みと塩味(淡口醤油)で味つけされる。小田巻蒸しは、うどんの入っただしたっぷりの茶碗蒸しである。大阪の商家では祝膳に出された。鶏肉、えび、なると、干しいたけ、みつば、ゆずなどをを入れる。関東煮は江戸風味の濃口醤油のだしではなく、淡口醤油が主体のすっきりした味である。大阪では具材に鯨の皮の「ころ」や牛すじ肉、タコ、煮込みちくわ、丸天、ごぼう天などが好まれる。どて焼きは牛すじ肉を茹で、昆布だし、白味噌やみりんでじっくり煮込んだ料理。ハリハリ鍋はくじら肉(尾の身・赤身)と水菜だけのシンプルな鍋で、かつお昆布だしに淡口醤油と酒だけで味つけし、さっと煮て食する。大阪のコナ文化の代表である、きつねうどん・お好み焼き・たこ焼きにもだしは欠かせない。
著者
東根 裕子 上村 昭子 八木 千鶴 山本 悦子 渡辺 豊子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.25, 2013

【目的】食事の簡便化等に伴い、行事食の伝承が難しい時代になってきている。平成21年・22年度の日本調理科学会特別研究として実施した「行事食」の調査結果のうち、雑煮の手作り度と他の行事食との関連を明らかにすることを目的とした。【方法】平成21年12月から平成22年3月、日本調理科学会特別研究の全国統一様式の調査用紙を用いて調査を実施した。今回は、大阪府に10年以上住み、40歳以上で調理担当者である301人を分析対象とした。正月料理の雑煮は家での手作り度が高く、雑煮の手作り度と他の行事との関連を検討した。調査を行った17行事のうち、行事食を家庭で作っている割合が高い正月、節分、上巳の節句、クリスマス、冬至を検討対象とした。【結果・考察】調査対象者の年齢は40・50歳代が79.7%、60歳代以上20.3%であり、同居の家族構成は2世代が65.8%、職業は専業主婦が46.2%、次いでアルバイト・パートが34.6%であった。行事食の影響は、58.1%の人が母方から受けていると答えた。雑煮を手作りする人は、79.7%であり、正月料理の煮しめ・なます・魚料理、節分のいわし・巻きずし、上巳の節句のちらしずし・潮汁、クリスマスの鶏肉料理の手作り度が、雑煮を手作りしない人に比べて高く、有意差が認められた(p<0.05)。雑煮を手作りしない人は、他の多くの行事食においても手作り度が低かった。また、手作り度と喫食状況は必ずしも同じ傾向ではなく、節分の巻きずしやクリスマスケーキの手作り度は低い(21.3%と16.4%)が、ともに60%以上の人が毎年食べていると答えた。食の簡便化・外部化の流れを受け止めつつ、行事食伝承の方策を探っていきたい。