著者
齊藤(北岡) 千佳 山本 純平 井部 奈生子 良永(加藤) 裕子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.30, 2018

【目的】麹菌<i>Aspergillus oryzae</i>はその酵素によって食品に独特の味や風味を付与することが知られている。本研究では、塩こうじを非加熱ろ過した調味液である「液体塩こうじ」が食肉の呈味およびテクスチャに及ぼす影響を調べ、おいしさ向上への寄与を科学的に検証することを目的とした。<br>【方法】試料には牛モモ肉および豚ロース肉を使用し、各試験に適した前処理を行った。味およびテクスチャはプロテアーゼ活性試験、HPLCによる遊離アミノ酸分析、レオメータによる破断強度測定、官能評価および味認識装置による味分析により評価した。統計解析には、<i>t</i> 検定または一元配置分散分析後、Tukeyの多重比較検定を用いた。<br>【結果】プロテアーゼ活性試験では、35℃処理のカゼインタンパク質量が他温度群に比べ有意に減少した。遊離アミノ酸分析では、牛および豚ミンチ肉において、液体塩こうじ処理群のうま味・甘味を示す成分が有意に増加した。破断強度は、液体塩こうじ処理群で有意に低値を示した。官能評価では有意差はなかったものの、理化学分析と矛盾しない傾向がみられた。味認識装置による分析では、液体塩こうじを添加した豚ミンチ肉で酵素活性の有無に関わらず「うま味後味」が無添加群より高かった。また液体塩こうじ添加群では、酵素を失活させるために高温処理した群よりも「苦味先味」が有意に低値を示した。以上の結果より、液体塩こうじは麹菌の酵素により食肉の呈味成分を増すとともに肉質を柔らかくすることから、味の向上への寄与が検証された。さらに、プロテアーゼの至適温度が35℃付近と判明したことから、加熱調理の直前に15分程度ぬるま湯に浸漬するとおいしさが増すことが示された。

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