- 著者
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二木 雄策
- 出版者
- 公益財団法人 損害保険事業総合研究所
- 雑誌
- 損害保険研究 (ISSN:02876337)
- 巻号頁・発行日
- vol.76, no.1, pp.1-25, 2014
<p> 交通事故における死亡慰謝料は金額で表示されるが,被害者の被った精神的・肉体的苦痛というのはもともと金銭で評価できるものではない。そこで実際には裁判所がその額を決定しているのだが,それがどのような根拠で算定されたかは不分明のままである。しかし損害賠償金は公平かつ適正なものでなければならないのだから,慰謝料額の背後には何らかの論理があってしかるべきだろう。</p><p> 本稿では被害者が死亡した交通事故についての過去の判例(44年間に亘る1962例)を資料として,それらに統計学的な方法,とりわけ回帰分析を適用することで,慰謝料の「計量分析」を試みる。それによって,交通事故の損害賠償ではその重点が逸失利益から慰謝料に徐々に移って来たこと,慰謝料の額が平準化してきたこと,その決定要因が規則性を持ち始め,とりわけ近時では加害者の言動や責任の度合いが重要な決定要因となっていること,等が示される。</p>