著者
吉田 道代
出版者
観光学術学会
雑誌
観光学評論 (ISSN:21876649)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.35-48, 2015

近年、多くの企業は同性愛者を優良な顧客・望ましい消費者として優遇し、行政や政治家もまた同性愛者を歓迎する姿勢を打ち出すようになっている。本稿は、異性愛者中心の主流社会における、こうした同性愛者の扱いをホスピタリティ(歓待)ととらえ、商業・政治分野に焦点を当てて、その特徴を分析する。企業や行政、政治家が同性愛者を歓待するようになったのは、彼ら彼女らが高い経済力を持ち、文化的エリートとしての地位を確立したこと、さらに同性愛の容認が人権への配慮の度合いをはかる指標という認識が広まったことによると考えられる。このような主流社会による同性愛者の経済的・文化的・政治的位置づけは、彼ら彼女らの市民的権利の獲得に有利に働くが、以下のような問題もある。一つは、こうした歓待の対象が主に先進国の富裕な白人男性に限定されるという点である。そのため、このグループ以外の性的少数者とされる人々のアイデンティティや文化的多様性がないがしろにされる危険性がある。もう一つは、国家による同性愛者への歓待が政治的問題の隠蔽に利用される可能性である。イスラエルの事例では、同性愛者への歓迎を通じて創出される自由で開かれたイメージを国家が利用して、パレスチナ人に対する暴力や抑圧などから国際社会の目をそらそうとしているという批判がある。

言及状況

外部データベース (DOI)

Twitter (2 users, 2 posts, 2 favorites)

小生ナナチはすぐツイ消しをするので面白そうな論文をツイートしてたらブクマじゃなくて自分でツイートしなおさないといけないとようやく学習した。 https://t.co/RjbCkrIuxi

収集済み URL リスト