著者
花岡 龍毅
出版者
科学技術社会論学会
雑誌
科学技術社会論研究 (ISSN:13475843)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.68-78, 2019

<p> 医療費が増加するのは高齢者が増えるからであるという一般に流布している見解が誤りであることは,医療経済学においては,ごく初歩的な常識である.本稿の課題は,こうした誤った認識の根底にある思想を「高齢者差別主義」と捉えた上で,こうした一種の「生物学主義」が浸透している社会の特質を,フーコーの「生政治」の思想を援用しながら検討することである.</p><p> 生権力は,もともと一体であるはずの集団を,人種などの生物学的指標によって分断する.年齢などの指標によって高齢者と若年者とに分断する「高齢者差別主義」もまた生権力の機能であるとするならば,そして,もしこうした仮説が正しいなら,フーコーの指摘は現代の日本社会にも当てはまる可能性がある.フーコーが私たちに教えてくれているのは,生権力のテクノロジーである生政治が浸透している社会は,最悪の場合には自滅にまでいたりうる不安定なものであるということである.</p>

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"端的に結論を言えば,人口の高齢化と医療費の増加との相関は見せかけの相関であって,医療費を決定する因子は,一国の 1 人当たり所得であるということが医療経済学の定説である(権丈 2006)" →改めて。

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読んでる。面白いかも。 CiNii 論文 -  高齢者をめぐる生政治:医療費増加の責めを高齢者に帰する言説の分析 https://t.co/wZhP96sv6S #CiNii

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