著者
花岡 龍毅
出版者
科学技術社会論学会
雑誌
科学技術社会論研究 (ISSN:13475843)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.68-78, 2019-04-20 (Released:2020-04-20)
参考文献数
19

医療費が増加するのは高齢者が増えるからであるという一般に流布している見解が誤りであることは,医療経済学においては,ごく初歩的な常識である.本稿の課題は,こうした誤った認識の根底にある思想を「高齢者差別主義」と捉えた上で,こうした一種の「生物学主義」が浸透している社会の特質を,フーコーの「生政治」の思想を援用しながら検討することである. 生権力は,もともと一体であるはずの集団を,人種などの生物学的指標によって分断する.年齢などの指標によって高齢者と若年者とに分断する「高齢者差別主義」もまた生権力の機能であるとするならば,そして,もしこうした仮説が正しいなら,フーコーの指摘は現代の日本社会にも当てはまる可能性がある.フーコーが私たちに教えてくれているのは,生権力のテクノロジーである生政治が浸透している社会は,最悪の場合には自滅にまでいたりうる不安定なものであるということである.
著者
小松 美彦 大谷 いづみ 香川 知晶 竹田 扇 田中 智彦 土井 健司 廣野 喜幸 爪田 一寿 森本 直子 天野 陽子 田中 丹史 花岡 龍毅 的射場 瑞樹 皆吉 淳平
出版者
東京海洋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

米国で誕生し日本に導入されたバイオエシックスの特性を検討した。すなわち、文明論、歴史、メタ科学、経済批判、生権力の視点が稀薄ないしは欠落していることを剔抉し、日本の生命倫理の改革の方向性を検討した。成果は共著『メタバイオエシックスの構築へ--生命倫理を問いなおす』(NTT出版、2010)にまとめた。また、バイオエシックスが導入された1970~80年代の日本の科学・思想・宗教・政治状況を、文献輪読やオーラルヒストリー調査などを通じて考察した。以上は、国内外の研究にあって初の試みであり、書評やシンポジウムなどで高く評価された。
著者
花岡 龍毅
出版者
科学技術社会論学会
雑誌
科学技術社会論研究 (ISSN:13475843)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.68-78, 2019

<p> 医療費が増加するのは高齢者が増えるからであるという一般に流布している見解が誤りであることは,医療経済学においては,ごく初歩的な常識である.本稿の課題は,こうした誤った認識の根底にある思想を「高齢者差別主義」と捉えた上で,こうした一種の「生物学主義」が浸透している社会の特質を,フーコーの「生政治」の思想を援用しながら検討することである.</p><p> 生権力は,もともと一体であるはずの集団を,人種などの生物学的指標によって分断する.年齢などの指標によって高齢者と若年者とに分断する「高齢者差別主義」もまた生権力の機能であるとするならば,そして,もしこうした仮説が正しいなら,フーコーの指摘は現代の日本社会にも当てはまる可能性がある.フーコーが私たちに教えてくれているのは,生権力のテクノロジーである生政治が浸透している社会は,最悪の場合には自滅にまでいたりうる不安定なものであるということである.</p>
著者
定松 淳 花岡 龍毅 田野尻 哲郎 田中 丹史 江間 有沙 廣野 喜幸
出版者
北海道大学 高等教育推進機構 オープンエデュケーションセンター 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.3-15, 2017-06

科学技術コミュニケーションの重要な課題のひとつとしてリスクコミュニケーションがあり(廣野 2013),そのなかでも一般市民にも広く接点のある領域として医薬品のリスクコミュニケーションがある.特に医薬品の副作用は身近で,重大なものになりえるにもかかわらず,その事実は社会的に十分認知されているとは言えない.医薬品リスクについてのコミュニケーションを活性化させ, リテラシーを向上させる必要がある.本稿では,医薬品についてのリスク情報を掌握している薬剤師の専門性に注目し,一般市民の薬剤師との関わりの実態についての探索的調査を行った.その結果から,医薬品リテラシーの向上のために薬剤師の専門性を活用する余地があること,その際には 前提としての「薬剤師が医薬品についての専門性を持っている」という点についての社会的認知を 高める必要があることを指摘する.これは,一般市民に対して知識の増進をつい求めてしまいがちな科学コミュニケーション一般に対しても,社会的なインデックス情報の重要性を指摘するものとして示唆するところが小さくないと考えらえる.
著者
花岡 龍毅
出版者
科学技術社会論学会
雑誌
科学技術社会論研究 (ISSN:13475843)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.192-207, 2020-04-30 (Released:2021-04-30)
参考文献数
52

抗がん剤開発における副作用リスクの公平な社会的分担を実現するためには,開発に際して服薬者が果たしている役割を明らかにすることが必要である.本稿の目的は,抗がん剤ゲフィチニブ開発において,副作用被害者のみならず臨床試験参加者をも含む服薬者が果たした役割を公式文書や科学論文を基に明らかにすることである.分析の結果,服薬者は次のような役割を担っていることが明らかになった.(1)第Ⅰ相,および第Ⅱ相の臨床試験参加者およびEAP参加者は,生命・健康をかけて,医薬品候補化合物ZD1839 を医薬品へと転化させた.(2)市販後に服薬した数多くの患者は, ゲフィチニブに潜在していた致死的な有害作用を証明し,第Ⅲ相臨床試験参加者は,ゲフィチニブに生存期間の延長効果はないが,無増悪生存期間の延長効果があることを,やはり生命と健康をかけて証明した.もしゲフィチニブの事例が例外でないならば,この事例から引き出される結論は,抗がん剤開発における必須の関与者が,一方的に副作用リスクを受忍するのは不合理であり,有用な抗がん剤は社会全体に恩恵をもたらしうるものであるから,製薬企業はいうまでもなく,広く社会的にリスクを分担する必要があるということである.
著者
廣野 喜幸 石井 則久 市野川 容孝 金森 修 森 修一 山邉 昭則 渡邊 日日 関谷 翔 高野 弘之 花岡 龍毅
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

国際比較の観点から、公衆衛生・医学研究に関する日本の医療政策の形成過程の特徴を明らかにするため、医学専門雑誌、審議会の議事録や裁判記録等の資料分析を中心に調査し、その成果を論文・口頭で発表した。また各年度、医学・医療行政の専門家に対してインタビュー形式の調査を実施した。調査を通じて積極的な意見交換を行いながら、日本の医療行政の仕組みやワクチン・インフルエンザ等の政策の歴史の把握、最新情報の収集に努めた。