著者
水野 進
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.103, pp.89-108, 2018

<p> 本稿は,文科省による検定の正統性確保メカニズムの展開とそこから産出される歴史教科書知識の性格に関し,B・バーンスティンの〈教育〉装置論とM・アップルの「妥協した知識」という概念を手がかりに考察したものである。その結果以下のことが明らかになった。①文科省は,政治社会的,学説的な背景要因のもと検定の正統性を確保するためにその透明性の向上,公正・中立性確保を至上命題としたが,そのことが逆に「複数の視線」による検定過程の環視を可能にさせ,その結果文科省は従来よりも強い修正意見を出しにくい状況を自ら作り出したこと,その際それを補完するものとして教科書会社の検定・採択通過のためのリスク管理が重要な役割を果たし上記の正統性確保に寄与していること,②2014年以降,一方で検定基準見直しで歴史教科書知識は検定の許容範囲を広げ,通説やそれ以外の事象に関する政府見解や最高裁判例などからなる確定的知識の領域と教科書に関わる諸勢力によって生成された「妥協した知識」等からなる未確定な知識の領域とに分かれ多様化したこと,また一部の事象では非記述という教科書会社の対応も招来させたこと,他方で検定審査要項見直しで執筆者・教科書会社の自己規制さらには教科書の多様性の減少へと繋がる可能性が生じたこと,以上である。</p>

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