著者
水野 進
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.103, pp.89-108, 2018-11-30 (Released:2020-06-26)
参考文献数
27

本稿は,文科省による検定の正統性確保メカニズムの展開とそこから産出される歴史教科書知識の性格に関し,B・バーンスティンの〈教育〉装置論とM・アップルの「妥協した知識」という概念を手がかりに考察したものである。その結果以下のことが明らかになった。①文科省は,政治社会的,学説的な背景要因のもと検定の正統性を確保するためにその透明性の向上,公正・中立性確保を至上命題としたが,そのことが逆に「複数の視線」による検定過程の環視を可能にさせ,その結果文科省は従来よりも強い修正意見を出しにくい状況を自ら作り出したこと,その際それを補完するものとして教科書会社の検定・採択通過のためのリスク管理が重要な役割を果たし上記の正統性確保に寄与していること,②2014年以降,一方で検定基準見直しで歴史教科書知識は検定の許容範囲を広げ,通説やそれ以外の事象に関する政府見解や最高裁判例などからなる確定的知識の領域と教科書に関わる諸勢力によって生成された「妥協した知識」等からなる未確定な知識の領域とに分かれ多様化したこと,また一部の事象では非記述という教科書会社の対応も招来させたこと,他方で検定審査要項見直しで執筆者・教科書会社の自己規制さらには教科書の多様性の減少へと繋がる可能性が生じたこと,以上である。
著者
小机 信行 水野 進
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.231-235, 1989
被引用文献数
7

本研究は発芽バレイショの部位別のPGAの測定及びわが国の代表的調理用品種のバレイショ ('男爵'及び'メークイン') を1°C, 8°C及び20°C暗黒下に貯蔵し, 貯蔵に伴う発芽状況を調査するとともに皮層部及び髄質部のα-チャコニン及びα-ソラニンの消長を調査したものである.<br>1. 発芽バレイショ ('メークイン') を4部位に分けそれぞれの部位におけるPGA含量を測定したところ,最も多いのが発芽伸長部及び発芽周辺部の皮層部であることがわかった. なお, 髄質部についてはα-チャコニンが極く微量検出されたにすぎず, α-ソラニンについては痕跡程度であった.<br>2. '男爵'及び'メークイン'を1°C, 8°C及び20°C下に貯蔵し, 発芽の状況を調査したところ, 'メークイン'の方が'男爵'より少し休眠期間が短かった. なお,両品種とも20°C貯蔵では20日後に発芽伸長が認められた. 1°Cでは貯蔵120日後まで発芽伸長は抑制された.<br>3. 両種バレイショの貯蔵中のPGA含量の変化を調べたところ, '男爵'は'メークイン'と比較するとPGA含量は少ないが両品種とも発芽伸長とともに増加することがわかった. なお, 1°Cの低温下で発芽伸長の抑制された期間内でも皮層部組織でPGAの蓄積現象が認められた. 一方, 髄質部では両品種ともPGAは検出されなかった.
著者
水野 進
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.103, pp.89-108, 2018

<p> 本稿は,文科省による検定の正統性確保メカニズムの展開とそこから産出される歴史教科書知識の性格に関し,B・バーンスティンの〈教育〉装置論とM・アップルの「妥協した知識」という概念を手がかりに考察したものである。その結果以下のことが明らかになった。①文科省は,政治社会的,学説的な背景要因のもと検定の正統性を確保するためにその透明性の向上,公正・中立性確保を至上命題としたが,そのことが逆に「複数の視線」による検定過程の環視を可能にさせ,その結果文科省は従来よりも強い修正意見を出しにくい状況を自ら作り出したこと,その際それを補完するものとして教科書会社の検定・採択通過のためのリスク管理が重要な役割を果たし上記の正統性確保に寄与していること,②2014年以降,一方で検定基準見直しで歴史教科書知識は検定の許容範囲を広げ,通説やそれ以外の事象に関する政府見解や最高裁判例などからなる確定的知識の領域と教科書に関わる諸勢力によって生成された「妥協した知識」等からなる未確定な知識の領域とに分かれ多様化したこと,また一部の事象では非記述という教科書会社の対応も招来させたこと,他方で検定審査要項見直しで執筆者・教科書会社の自己規制さらには教科書の多様性の減少へと繋がる可能性が生じたこと,以上である。</p>
著者
水野 進 谷口 保
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.207-214, 1972 (Released:2007-07-05)
参考文献数
16
被引用文献数
1

11月27日の収穫果を, 関係湿度80~90%のもとで, 20°, 10°, 6°および2°Cの各温度において, 貯蔵中ならびに出庫後の呼吸, 成分の変化につき検討した.1. 腐敗は20°C, 60日(2月上旬), 10°, 6°C, 120日(4月上旬), 2°C, 160日(5月中旬) 頃より急激に増加する. また20°, 10°Cでは果皮の乾燥がはげしく, 腐敗病も6°C以下と異なり, 果軸周辺部に軸ぐされ病の現われるものが多かつた.2. 貯蔵中の呼吸量は, 低温ほど少なく, しかも入庫1日間 (20°Cでは3日間) に急減し, その後腐敗果の増加期まで一定していた.3. 6°C以下の低温では, ビタミンCの消耗が非常に少なく, ついで糖, 減少の多いのは酸であつた. また腐敗率の高い20°C, 81日, および10°C, 150日では健全果でも, ビタミンC量, 糖量も著しく減少していた.4. 2°Cに貯蔵した場合, 4月中旬より低温障害の兆候のある果実が目立ち, アルコール系揮発物質の発生とこれに伴うCO2発生量が増加した.5. 各温度より20°Cに移した場合, 7~12時間で呼吸上昇のピークに達し, また低温ほどピーク量は大であつたが, 86日程度の貯蔵であれば, 2°Cという低温でも3日後には呼吸量が正常に復していた. これに対し, 150日貯蔵の各区の呼吸量は, 出庫1日目に86日貯蔵の約2倍の高い呼吸量を示すとともに, その後減少を続けるのみであつた.6. 温度較差の高い, すなわち貯蔵温度が低いほど, 出庫後の果汁成分の消耗ははげしく, とくにビタミンC, 酸の減少は著しかつた.7. 果実温を徐々に上昇させるじゆん化を行なうと, 呼吸の急上昇を起こらず, 腐敗率, 果汁各成分の減少率とも小さかつた.
著者
小机 ゑつ子 水野 進
出版者
園藝學會
雑誌
園芸學會雜誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.435-441, 1989

タケノコ先端部 (A区分) 及び基底部 (D区分) の各組織切片に D-グルコース-U-<sup>14</sup>C 及びシキミ酸-G-<sup>14</sup>Cを取り込ませ3, 6, 9, 21時間反応させたのち, 各画分に取り込まれた<sup>14</sup>Cの活性を測定し, タケノコに多量に含まれるチロシンの合成及び利用について検討した.<br>1. タケノコ組織に取り込まれたグルコース-U-<sup>14</sup>CはA区分では全活性の11.4% (3時間後) から13.6%(9時間後), D区分では16.4% (3時間後) から52.5% (9時間後) がアルコール不溶性残渣に移行した. アミノ酸画分へは9時間後にA区分で4.1%が, D区分で12.8%が取り込まれた.<br>2. グルコース-U-<sup>14</sup>Cはすべてのアミノ酸へ取り込まれたが, 最も活性の高いのがアラニンであり, 次いでr-アミノ酪酸, グルタミン酸であった. チロシン及びフェニルアラニンに取り込まれた活性はアミノ酸画分に対して各々0.6~7.8%及び0.7~4.8%であった.<br>3. 取り込まれたシキミ酸-G-<sup>14</sup>Cの総活性のうちA区分では反応時間を通して約20%が, D区分では約10%がアミノ酸画分に移行し, その他の画分への移行はわずかであった.<br>4. シキミ酸-G-<sup>14</sup>Cはチロシン及びフェニルアラニンに効率良く取り込まれ, 21時間後には総活性の12%(A区分) から8% (D区分) がチロシンに, 同様に10% (A区分) から6% (D区分) がフェニルアラニンに取り込まれた.<br>5. リグニンアルデヒドへの移行はグルコース-U-<sup>14</sup>Cの場合, 9時間後に総活性の0.36% (A区分) から0.98% (D区分) が, シキミ酸-G-<sup>14</sup>Cでは21時間後に0.82% (A区分) から2.15% (D区分) であった.<br>6. シキミ酸G-<sup>14</sup>Cからホモゲンチジン酸へ取り込まれた<sup>14</sup>Cの活性は非常に少なく21時間後で総活性の0.1から0.2%であった.<br>7. 本実験結果よりタケノコ組織に存在するチロシンの生成はグルコース及びシキミ酸を前駆体とするシキミ酸経路によるものと推定される.
著者
小机 ゑつ子 水野 進
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.719-722, 1989
被引用文献数
4

孟宗竹のタケノコを用いて, HGA含量に及ぼす収穫時期, 大きさ, 栽培地ならびに貯蔵の影響について調べた.<br>1. 収穫時期別の調査では, 1987年3月25日の初収穫から約2週間の間に収穫されたタケノコにHGA含量が多く (111.2~248.0&mu;g/100gFW), 最盛期以後のタケノコでは低い値 (36.8~12.3&mu;g/100gFW) であった.<br>2. 重量別ではL級 (900g程度) タケノコのHGA量は73.5&mu;gであったが, 小さくなるほど増加し, 特にSS級では114.2&mu;gと最も多かった.<br>3. 貯蔵中の変化については, 1&deg;C貯蔵では経時的に減少し, 当初の75.5&mu;gから9日後には32.2&mu;gになった. 20&deg;C貯蔵では2日後まではほとんど変化せず, その後は減少した.<br>4. 産地間の比較では, 含量にかなりの差異が認められた.
著者
小机 ゑつ子 水野 進
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.719-722, 1989 (Released:2007-07-05)
参考文献数
4
被引用文献数
1 4

孟宗竹のタケノコを用いて, HGA含量に及ぼす収穫時期, 大きさ, 栽培地ならびに貯蔵の影響について調べた.1. 収穫時期別の調査では, 1987年3月25日の初収穫から約2週間の間に収穫されたタケノコにHGA含量が多く (111.2~248.0μg/100gFW), 最盛期以後のタケノコでは低い値 (36.8~12.3μg/100gFW) であった.2. 重量別ではL級 (900g程度) タケノコのHGA量は73.5μgであったが, 小さくなるほど増加し, 特にSS級では114.2μgと最も多かった.3. 貯蔵中の変化については, 1°C貯蔵では経時的に減少し, 当初の75.5μgから9日後には32.2μgになった. 20°C貯蔵では2日後まではほとんど変化せず, その後は減少した.4. 産地間の比較では, 含量にかなりの差異が認められた.
著者
水野 進 谷口 保 浜田 憲一
出版者
神戸大学
雑誌
神戸大学農学部研究報告 (ISSN:04522370)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.165-170, 1972

1968,1969および1971年, 林系温州を使用し, 温州ミカンの成熟期を呼吸現象より追求し, これにもとづき, 1971年低温貯蔵(2℃)にたいする採収適期を果実の外観ならびに品質などから検討した。1.成熟期に関して。果実の着色期(1968年は11月13日, 1969年は11月20日, 1971年は11月18日)より呼吸の上昇が認められ, その後ほぼ安定した呼吸率を示すが, 12月下旬より多少低下の傾向であった。また内容成分は呼吸上昇2&acd;3週間後に充実していた。したがって呼吸上昇時より2&acd;3週間後が温州ミカンの完熟期と考えられる。また20℃下で各採取期時の果実(1971)のエチレン発生をともなった呼吸の上昇は, 完熟期採取果が最もおそく, この時期より遠ざかる採取時期果ほどはやくなった。2.低温貯蔵(2℃)と熟期との関係。1971年11月18日(成熟始め), 12月7日(完熟)および12月20日(老化始め)に採収した果実の低温貯蔵性(1972年6月8日まで)を貯蔵終了時および出庫8日目に, 果実の状態ならびに品質よりみると, 貯蔵終了時商品価値の最も高いのは12月7日採収果であり, ついで12月20日採収果であった。この傾向は出庫8日目においてもまったく同じであった。すなわち, 11月18日採収貯蔵果では腐敗果および低温障害果の発生が多く, また12月20日採収貯蔵果では萎凋果の発生が多かった。糖および酸の含有率は12月7日および12月20日の両採収果間では, 貯蔵終了時ならびに出庫8日目において大差なかった。以上より温州ミカンは着色期より呼吸の上昇が始まり, この時期を境に成熟過程に進み, その後2&acd;3週間で完熟する。また長期保存を目的とする低温貯蔵には完熟期の果実が最適と思われる。
著者
水野 進
出版者
神戸大学
雑誌
神戸大学農学部研究報告 (ISSN:04522370)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.1-5, 1971

野菜の貯蔵に関し, 5種のフラスチックフィルムを使用し, その適応性を低温ならびに常温で検討した。1. 密封試験には材料としてホーレン草を使用したが, 低温(2℃)貯蔵であれば, 何れのフィルムでもその貯蔵性は常温より著しく高まった。しかし重量減少の点を考えると, 塩化ビニール, あるいは二軸延伸ポリプロピレンが最も良く, 次いでポリエチレンであり, 無延伸ポリプロビレン, ならびにポリスチレンは不適当であった。また常温(20℃)では, 何れのフィルムでも, 袋内のCO_2濃度が高く, O_2濃度が低くなり, 包装効果は期待出来なかった。2. パーフオレーション包装試験の材料としては, 芽キャベツを使用した。1包装に芽キャベツ30ケ, 重量約270gの場合, 直6mmの穴を2-4個あけた場合, 袋内のCO_2濃度は, 或程度高く, 鮮度の保持も良好であった。8個以上の場合, 萎れの防止はあるが, 袋内のCO_2,O_2濃度は無包装と変らず, 鮮度の低下すなわち黄色化が目立って来た。
著者
水野 進 寺井 弘文
出版者
神戸大学
雑誌
神戸大学農学部研究報告 (ISSN:04522370)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.235-240, 1979

現在, 果実の鮮度保持剤(エチレン吸収剤)として市販されている, GP, NGP, AP-1,V-2について, そのエチレン吸収能力を検討した結果, 普通の包装状態(湿大気状態)では, NGPおよびAP-1のみが, エチレン吸収剤としての効力をあらわし, AP-1が, エチレン吸収能力(吸収速度と許容量)で最もすぐれていた。また, エチレン吸収剤を, ポリエチレン密封と併用することにより, 袋内がCA状態にあると共に, 袋内エチレン除去が可能であり, 単なるポリエチレン密封よりも, 果肉軟化の抑制, 内容成分の保持, すなわち, 鮮度保持に効果が期待出来るのは明らかである。
著者
松井 範義 上山 泰 水野 進
出版者
神戸大学
雑誌
神戸大学農学部研究報告 (ISSN:04522370)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.p341-347, 1981-01

牧草を, 天日で能率的な乾燥をするため, ビニールハウス内で切断処理別, 草量差別の乾燥試験を行った。同じ条件で露地乾燥を併行し両者を比較検討した。1. ビニールハウス内乾燥は露地乾燥に比し, 乾燥速度が速く, 初夏には貯蔵に耐え得る乾草を得ることが出来た。平均乾減率は試験全期を通じて露地乾燥より, ハウス内乾燥の方が高く能率的である。2. 乾燥速度促進のための処理としては, 牧草を出来るだけ短かく切断, 又はフレール型のモアーで打砕処理すると効用が高い。他方, 面積当りの草量は少ない程乾燥速度が速くなる。3. ビニールハウス内の温度は, 日中外気温に比し10℃以上高く乾燥に効果的である。しかし夜間の気温は低いため効果は皆無である。