- 著者
-
岡谷 隆基
研川 英征
- 出版者
- 公益社団法人 日本地理学会
- 雑誌
- 日本地理学会発表要旨集
- 巻号頁・発行日
- vol.2021, 2021
<p>1.はじめに</p><p> 10年前に発生した東日本大震災は東北地方太平洋岸を中心に未曾有の災害をもたらし,津波が想定浸水範囲を超えて発生したことなどから「想定外」という言葉が多く用いられた。しかしながら,地震や豪雨などに伴う災害は現在の地形や地盤をもたらした土地の成り立ちを強く反映して発生するものであり,地形分類図などの地理情報は人々に起こりうる災害への想像力を「想定外」を超えて働かせることに寄与すると考える。国土地理院はそうした情報を従前より整備してきた。</p><p> 他方,国土地理院は地理空間情報当局として,前身を含めて1世紀以上,地形図を作成,刊行している。当該地形図は,小中学校の社会科や高等学校の地歴科などにおいて,地図を学習する基盤としても長くその役割を果たしてきている。他方,20世紀末からはウェブ地図やカーナビの地図など,我々が普段目にする地図には情報通信技術の急速な発展を背景としたデジタルのものが急速に増えている。国土地理院でもデジタル化の流れに対応すべく,数値地図などのデジタルプロダクトの作成・刊行,電子国土Webシステムや地理院地図などのウェブ地図の整備・公開に取り組んできた。先述した地形分類図なども地理院地図の主要なコンテンツの一つである。</p><p> 本発表は,国土地理院が重点的に改善を行ってきた地理院地図の取組の経緯等について,地理教育や防災教育への波及などを念頭に置きながら報告するものである。</p><p></p><p>2.地理院地図の進化</p><p> 国土地理院は,国土に関する様々な地理空間情報を統合し,コンピュータ上で再現する仮想的な国土として「電子国土」の概念を提唱し,この概念を実現するためのツールとして,平成 15 年に電子国土Webシステムを公開した。以降も改良を重ねる中で,オープンソースソフトウェアの積極的な採用を進め,平成25年に「地理院地図」を公開し,ウェブブラウザのみならずスマートフォンや PC 用の地図表示ライブラリからも地図データが利用できるようになった(北村ほか,2014)。</p><p> 以降も,様々なコンテンツや機能が追加実装され続けているが,地理教育や防災教育に活用できる機能の強化も進んでおり,例えば以下のようなものが追加された(国土地理院,2021a)。</p><p>・空中写真の全国シームレス化,地下震源断層モデルの3D表示の実現(平成28年度)</p><p>・断面図作成,標高段彩機能の実装(平成29年度)</p><p> 地理院地図はhttps://maps.gsi.go.jp/から利用できる。また,教育における活用事例なども地理院地図の使い方ページ(国土地理院,2021b)に示している。地理院地図のコンテンツの拡充や機能強化の取組を通じ,今後起こりうる災害への想像力を働かせることに寄与できると考える。このような取組を通じて,今後も防災・減災に寄与していきたい。</p><p></p><p>参考文献等</p><p>北村京子・小島脩平・打上真一・神田洋史・藤村英範(2014):地理院地図の公開.国土地理院時報,125,53-57.</p><p>国土地理院(2021a):過去のお知らせ.</p><p> https://maps.gsi.go.jp/help/notice.html(最終閲覧日:2021.1.10)</p><p>国土地理院(2021b):地理院地図の使い方.</p><p> https://maps.gsi.go.jp/help/intro/(最終閲覧日:2021.1.10)</p>