著者
岡谷 隆基
出版者
日本地図学会
雑誌
地図 (ISSN:00094897)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.12-18, 2022-06-30 (Released:2023-09-14)
参考文献数
20

Author carried out this study for clarifying topographical characteristics and verifying scale of natural phenomenon in the places indicated by the “Shizensaigaidenshohi” (monument of natural disaster). The followings are the major results.1) Clarification of topographic characteristics where a “Shizensaigaidenshouhi” stands or indicates.Most of the place where “Shizensaigaidenshouhi” (monument of natural disaster, simply referred to as “the monument” in this article) stands or indicates, locates not only in very low areas (e.g. flood plain), but also in a little bit higher areas (e.g. natural levee). This is because the monument building was not reasoned by heavy rainfall or flood itself, but by the damage of lives or properties which exist in higher areas.2) Verification of scale of natural phenomenon which brought disaster where a “Shizensaigaidenshouhi” stands or indicates.Past flood depth inferred by the description of the subject monuments was slightly low or equal to that estimated by modern hazard map. In early and middle of the 20th century, many flood disaster happened and the relevant monuments were built thereafter, but in the late 20th century, the number of severe floods which recorded in the monuments decreased. However, frequency of heavy rainfall is increasing recently. This suggests flood disasters likely to be recorded in the monuments would occur again in the near future.These results show that location of a “Shizensaigaidenshouhi” stands or indicates prefers a little bit higher areas as people lives more in such areas compered to lower land and also show that past flood depth inferred by the description of the subject monuments was compatible with that estimated by modern hazard map.Map symbol “Shizensaigaidenshohi” is recently introduced to the basic topographic maps, and the new topographic maps therefore provide people with new map reading experience, which might raise people's awareness of disaster prevention as existence of “Shizensaigaidenshohi” is deeply relating to topography.
著者
岡谷 隆基
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2019, 2019

国土地理院は、我が国の位置の基準を管理し位置を測れる環境を提供し、日本の国土全体の地図を整備しさまざまな形態で提供し、災害情報をより早くわかりやすく提供すること、すなわち国土を「測る」「描く」「守る」ことを任務としている。中でも「描く」の取組により提供されてきた地形図は過去1世紀近くにわたり、地理教育の各場面において課題考察などのためのツールとして教科書等で広く扱われてきた。他方、平成28・29年度に順次告示された次期学習指導要領を受けた中学校社会科及び高等学校地理歴史科の学習指導要領解説では、従前の地形図や主題図に加え「地理院地図」についてその活用の意義が明記されるなど、地理教育における地理院地図への期待は大きい。次期学習指導要領において高等学校で地理が新たに必履修化され、新科目「地理総合」が平成34年度から開始するが、その中では課題解決に地図やGISを活用することとしている。しかしながら、中学校社会科及び高等学校地理歴史科の教員の大半が地理専攻出身者ではないことから、いきなり高度なGISソフトウェアを扱うことは困難であり、地理院地図がGIS学習の入り口の役目も果たすものと考える。こうした状況を踏まえ、当日は高等学校における地理必履修化を見据えた地理院地図の活用法について報告する。
著者
岡谷 隆基 研川 英征
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2021, 2021

<p>1.はじめに</p><p> 10年前に発生した東日本大震災は東北地方太平洋岸を中心に未曾有の災害をもたらし,津波が想定浸水範囲を超えて発生したことなどから「想定外」という言葉が多く用いられた。しかしながら,地震や豪雨などに伴う災害は現在の地形や地盤をもたらした土地の成り立ちを強く反映して発生するものであり,地形分類図などの地理情報は人々に起こりうる災害への想像力を「想定外」を超えて働かせることに寄与すると考える。国土地理院はそうした情報を従前より整備してきた。</p><p> 他方,国土地理院は地理空間情報当局として,前身を含めて1世紀以上,地形図を作成,刊行している。当該地形図は,小中学校の社会科や高等学校の地歴科などにおいて,地図を学習する基盤としても長くその役割を果たしてきている。他方,20世紀末からはウェブ地図やカーナビの地図など,我々が普段目にする地図には情報通信技術の急速な発展を背景としたデジタルのものが急速に増えている。国土地理院でもデジタル化の流れに対応すべく,数値地図などのデジタルプロダクトの作成・刊行,電子国土Webシステムや地理院地図などのウェブ地図の整備・公開に取り組んできた。先述した地形分類図なども地理院地図の主要なコンテンツの一つである。</p><p> 本発表は,国土地理院が重点的に改善を行ってきた地理院地図の取組の経緯等について,地理教育や防災教育への波及などを念頭に置きながら報告するものである。</p><p></p><p>2.地理院地図の進化</p><p> 国土地理院は,国土に関する様々な地理空間情報を統合し,コンピュータ上で再現する仮想的な国土として「電子国土」の概念を提唱し,この概念を実現するためのツールとして,平成 15 年に電子国土Webシステムを公開した。以降も改良を重ねる中で,オープンソースソフトウェアの積極的な採用を進め,平成25年に「地理院地図」を公開し,ウェブブラウザのみならずスマートフォンや PC 用の地図表示ライブラリからも地図データが利用できるようになった(北村ほか,2014)。</p><p> 以降も,様々なコンテンツや機能が追加実装され続けているが,地理教育や防災教育に活用できる機能の強化も進んでおり,例えば以下のようなものが追加された(国土地理院,2021a)。</p><p>・空中写真の全国シームレス化,地下震源断層モデルの3D表示の実現(平成28年度)</p><p>・断面図作成,標高段彩機能の実装(平成29年度)</p><p> 地理院地図はhttps://maps.gsi.go.jp/から利用できる。また,教育における活用事例なども地理院地図の使い方ページ(国土地理院,2021b)に示している。地理院地図のコンテンツの拡充や機能強化の取組を通じ,今後起こりうる災害への想像力を働かせることに寄与できると考える。このような取組を通じて,今後も防災・減災に寄与していきたい。</p><p></p><p>参考文献等</p><p>北村京子・小島脩平・打上真一・神田洋史・藤村英範(2014):地理院地図の公開.国土地理院時報,125,53-57.</p><p>国土地理院(2021a):過去のお知らせ.</p><p> https://maps.gsi.go.jp/help/notice.html(最終閲覧日:2021.1.10)</p><p>国土地理院(2021b):地理院地図の使い方.</p><p> https://maps.gsi.go.jp/help/intro/(最終閲覧日:2021.1.10)</p>
著者
小荒井 衛 小松原 琢 黒木 貴一 岡谷 隆基 中埜 貴元
出版者
国土地理院・地理地殻活動研究センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

芋川流域で火山灰分析に基づく段丘編年を行った.芋川流域で最も高位の段丘から浅間草津火山灰(As-K)が検出されなかったことから,この段丘面は16,500年以降に形成された面と推察される.段丘形成年代から小松倉背斜の成長速度の見積もると,0.8~1.9×10^<-6>/年となり,西山丘陵の活褶曲の成長速度や小千谷地区の活褶曲の成長速度と,オーダー的には同程度である.長野県・新潟県県境付近の地震では,逆断層の上盤側で,地質,地質構造,既存活断層の分布等に支配される形で地盤災害が集中しており,今回の地震に伴い松之山背斜が成長した可能性が指摘できた.