著者
岩本 廣美
出版者
一般社団法人 人文地理学会
雑誌
人文地理 (ISSN:00187216)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.181-201, 2021

<p>本稿の目的は,第二次世界大戦後の日本の中学校地理教育における地域学習の展開状況を明らかにすることである。研究方法として,次の3点を検討した。①学習指導要領の記述,②単元「身近な地域」の教育実践に関する先行研究,③単元「身近な地域」に関するフィールドワークを取り入れた教育実践事例。その結果は次のとおりである。まず,1958年から2017年までの学習指導要領において,単元「身近な地域」は,名称や位置付けを変えながら,一貫して配置されてきたことがわかった。次に,先行研究から,近年の単元「身近な地域」の教育実践において,地形図は盛んに活用されていることがわかった。高等学校の入学試験でしばしば地形図に関する問題が出題されるからである。しかし,フィールドワークを取り入れた教育実践はきわめて少ない。多くの教師は,その理由に年間の授業時間の不足を挙げる。筆者は,多くの教師が,「身近な地域」で学習すべき問題を発見できないためであると推測する。3つ目に,フィールドワークを取り入れた単元「身近な地域」の教育実践事例には,水準の高いものがあることがわかった。多くの教師が実践しやすいフィールドワークの指導方法として,近年では,内容を精選し,50分以内に実施できるものが提案されている。その実現のためには,教員養成・研修の充実が必要である。</p>

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