著者
末森 明夫
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.71, no.3, pp.411-428, 2020

<p>本稿はアクターネットワーク論および存在様態論を基盤とする非近代主義を援用し,徳川時代より大正時代に至る史料にみる日本聾唖教育言説の変遷の追跡を通して,明治時代における日本聾唖教育制度の欧米化という事象を相対化し,徳川時代と明治時代の間における日本聾唖教育言説の連続性を前景化し,日本聾唖教育史に新たな地平を築くことを眼目とした.具体的には,徳川時代の史料にみる唖ないし仕形(=手話)に関連する記述を分析し,唖の周囲に配置された唖教育に携わる人たち(=人間的要素)や庶民教化政策,手習塾,徒弟制度(=非人間的要素)が異種混淆的に関係性を構築し,唖が諸要素との関係性の下に実在化していく様相を明らかにした.また,仕形を唖の周囲に配置された人間的要素および非人間的要素の動態的関係性として把握し,聾文化論にみる「聞こえない身体」と「手話を使う身体」の不可分的関係性は,「聞こえない身体」と「手話を使う身体」の関係性が一時的に一義的関係性を伴う仲介項に変化し外在化(=純化)したものであることを明らかにした.さらに,徳川時代の日本社会において,唖や仕形をはじめとする諸要素の関係性が変化し続け,明治時代を経て現在の聾文化論が内包する諸問題にもつながっていることを明らかにし,非近代主義に則った日本聾唖教育史の再布置をはかった.</p>

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@SasakiSolomon なお僭越の至りではありますが、江戸時代と明治時代の唖教育の連続性を論じた拙稿は下記のとおりです。ご叱正を仰ぎたく、ご理解およびご高配のほどお願い申し上げます。 vid. https://t.co/ONWjXvkM3L

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