- 著者
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岡田 将彦
安形 麻理
小島 浩之
- 出版者
- 三田図書館・情報学会
- 雑誌
- Library and information science (ISSN:03734447)
- 巻号頁・発行日
- no.64, pp.33-53, 2010
原著論文【目的】図書館における資料保存では, 紙の長期保存が端緒となってさまざまな取り組みがなされてきた。近年, 製本形態も扱った図書の状態調査が始まったが, 無線綴じや接着剤の状態に焦点を当てた調査はほとんどない。しかし, 戦略的な資料保存のためには状態調査が不可欠である。本研究では, 現代の図書の主流である無線綴じの状態を把握するため, (1)専門書を中心に所蔵する大学図書館における無線綴じ図書の割合を明らかにする, (2)損傷状況を明らかにする, (3)損傷の原因を検討する, の3点を目的に調査を行った。【方法】調査票は, 国立国会図書館による状態調査の調査票を基に, 無線綴じに特化した項目を追加して作成した。調査対象は, 大規模開架図書館である慶應義塾大学三田メディアセンターの蔵書のうち, 1962年以降に受入した図書とした。1960年代から2000年代までの10年ごとの資料群から, ドロットのランダムサンプリング法を用いて, 和書(日本語・中国語・朝鮮語)・洋書400点ずつ, 合計4, 000点を抽出した。6名の調査者が, 調査票にしたがい, 標本を調査した。【結果】調査の結果からは, 和書・洋書ともに, ソフトカバー・ハードカバーにかかわらず無線綴じの割合が一貫して増加していること, 洋書の方が無線綴じの採用時期は早かったが, その後の増加率は緩やかであること, 現在では和書の方が無線綴じの割合が高く, 2000年代には全体の75.3%(ソフトカバーでは94.8%)に達すること, などが明らかになった。無線綴じに特徴的な損傷である背割れの割合は和書の方が高かったが, 和書・洋書ともに出版後間もない2000年代の図書でも生じているという全体的な傾向は共通していた。分析の結果, 貸出回数が背割れの大きな要因であることが明らかとなった。