- 著者
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朴澤 泰男
- 出版者
- THE JAPAN SOCIETY OF EDUCATIONAL SOCIOLOGY
- 雑誌
- 教育社会学研究 (ISSN:03873145)
- 巻号頁・発行日
- vol.91, pp.51-71, 2012
本稿では男子の大学進学率の地域格差,すなわち都道府県間の差が構造的に生ずるメカニズムを説明することを目的に,人的資本理論の枠組みに基づいて,都道府県別データと,高校生及びその保護者を対象とする質問紙調査の分析を行った。<BR> 分析の結果,得られた知見は以下の通りである。第一に,大卒と高卒の男子一般労働者の平均時給を県別に推計したところ,その相対賃金(大卒/高卒)が大きい県ほど大学進学率が低い。20~24歳の男子の相対賃金は,男子大卒労働需要(出身県の20~24歳の大卒就業者数を高卒就業者数で除して定義)と負の相関関係にある。<BR> 第二に,男子大卒労働需要を用いて,県単位の大学進学率の回帰分析を行った。その結果,大卒労働需要の大きい県ほど地方在住者の県外進学率や,進学率全体が高いことがわかった。なお県外と県内の進学率は負の相関関係にあるため,収容率は大学進学率全体にはほとんど関連性がない。<BR> 第三に,高校生調査を用いた分析でも同様の結果が得られた。大学進学希望の有無に関する二項ロジスティック回帰分析を行うと,個人間で異なる家計所得や学力を統制してもなお,大卒労働需要の多い県に住む男子ほど,大学進学希望を(地方在住者の場合,県外進学希望も)持つ見込みが高いことが確かめられた