著者
秋葉 昌樹
出版者
THE JAPAN SOCIETY OF EDUCATIONAL SOCIOLOGY
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.92, pp.83-104, 2013

本稿の目的は,「フォーラムシアター」と呼ばれる応用演劇の手法によって,養護教諭が日常的に抱える問題意識やその仕事の流儀と向き合う作業を支援する方法について考察し,「教育臨床の社会学」の新たな展開可能性を探ることにある。<br> 「フォーラムシアター」は,観客ないし演じ手が日頃直面しがちな問題をとりあげ劇として上演し,観客を巻き込んだ 討論と劇の再演を繰り返しながら問題状況における変化,変容可能性を探っていく手法である。それはいわば演劇を用いた社会教育的実践とも言いうるものだが,その応用的性格からか,理論的定式化は必ずしも十分に進められてこなかった。<br> 本稿では,この手法がもたらす当事者支援の可能性を視野に,筆者が養護教諭らのグループとともに運営してきたフォーラムシアターを事例として分析した。 その結果見えてきたことは,フォーラムシアターという手法によって,参加者である養護教諭が,日頃の葛藤や問題意識を共有しつつ再認識し,またそれらを乗り越えるべく主体的に探究を開始し,今後の変容可能性を見いだしているということである。そして本稿では,参加者によって主体的に見いだされる変容可能性が,フォーラムシアターが備える遊戯性および"未完"性という構造的特質によってもたらされることを明らかにした。

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